アリシゼーション編
序章?彼の世界で待つ者
白亜の塔にある者達
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「…………」
朗らかに話しかける男をガン無視する少女、アリスは無言で男の方に向かって行こうとし……足を崩した。無理もない。長時間の空中輸送に加え、足を縛られているためにバランスを崩すのは仕方のない事だった。
「おっと……」
男は素早くしゃがんでその小さな体を支える。肩あたりを支えて少女を立たせると頭をカリカリ掻いてから「うむ」と頷いた。
「アリスちゃん、ちょっと動かないでね。危ないから」
「…………?」
訝しむアリスを他所に男は右手の五指を揃えると頭上に振り上げた。
「《三千蓮花》」
その右腕が一瞬光ったと思うと次の瞬間には振り下ろされた状態になり、間を置いてピシッと音が鳴った。音の出処は少女を縛っていた鎖。
「きゃ……??」
「それで歩き易くなったろう?」
少女を縛っていた鎖は微塵に砕け、足下に散った。少女は自由になった手足をさすり、戸惑いの表情を男に向けた。
「あの……」
「急な事で驚いたと思うけど、まあ悪いようにはしないよ。『審問の後処刑』ってのは昔からの決まり文句で実は処刑された例は皆無だ……ま、二度と会えない家族からしてみればアリスちゃんは処刑されたも同然だけど」
「……これから、私はどうなるんですか?」
「ん。とりあえずは数日間は地下牢にいてもらう事になるかな。その後は教会の職員として一生働くことになると思うけど……」
男は段々と声を小さくしいき、ジッとアリスを見詰めるとやがて悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべた。
「それとも神聖術とか勉強してみるかい?」
「え?」
「罪を償うために教会に尽くすのなら神聖術を覚えておくのも良いと思うよ。もし、その気ならそのように取り計らってあげよう」
少女は仮にも罪人。対して男は秩序を守る《公理教会》のトップ層にいる人物。少女の中の常識に照らし合わせてみれば何かあるのではないかと勘ぐるのも無理は無い事だった。どう言って良いか分からない少女が黙っていると男はふっと笑って言った。
「まあ好きにするがいいさ。学問するも良し、剣を習って騎士見習いをするも良し。せっかく人界の中心に来たんだ。《禁忌目録》に違反しない程度に色々やってみろ」
そして男はアリスに背を向け、ゆっくりと歩みを進める。罪人である彼女が逃げるなどとは微塵もおもっていないかのようにーーー
少女は恐怖と戸惑いと、好奇心。様々な思いを抱いて男に続いた。
一年後、
「…………」
修道女見習いの服に身を包んだアリス?ツーベルクは人界の中心に位置する《セントラル?カセドラル》60階の廊下を足速に歩いていた。50階より上は教会の事
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