アリシゼーション編
序章?彼の世界で待つ者
白亜の塔にある者達
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人界歴372年《央都セントリア》
世界の中心に立つ白亜の塔の根元。綺麗に整えられた庭園の一画は直径50m程の円形広場となっていた。
「……あれかな?」
中心点からややずれたその空白の広場に若い男が1人立っている。暗色の騎士甲冑に紅いマント。兜は被らず、風に揺れる少し長めの銀髪は頭の後ろで一纏めに縛ってある。
その若い男が見上げる蒼天の空の中にある一点の黒いしみ。いや、そのもの自体の色は白銀なのだが逆光のせいで黒く見える。
ーズゥゥゥン
地面を鳴動させ、白銀の飛竜が地面に足を着ける。その振動や余波がまだ収まらぬ内に庭園で待っていた男が飛竜に向かって歩き出した。
それに気がついた飛竜の騎手、これまた白銀の重甲冑と竜の頭を模した兜で全身を固めた巨漢が重量を感じさせぬ身軽な動きで竜から飛び降りた。
「やあ、デュソルバート。元気だったか?」
「……指南役殿直々のお出迎えですか」
「ん?ああ、ファナティオ嬢が何時もの病気を拗らせてな。お陰で今は暇なんだよ」
「騎士団長殿は?」
「出征中だ。明朝には戻るだろう……それで、例の咎人さんは?」
兜を被っているため表情は見えないが、声のトーンでデュソルバートが中々本題に入らない男に苛立ちを募らせていくのを感じたため、仕方なしに話題を変える。
デュソルバートは一礼して体の向きを変えると再び竜に向かって行き、その巨体の足元から鎖で繋がれた少女を外した。
「歩け」
「…………っ??」
手と足を鎖で繋がれ、その小さな少女は歩きづらそうにこちらへやって来る。
「ノースガラン北帝国北端の村、ルークリッドより連行いたしました。名はーーー」
「アリス?ツーベルクです」
デュソルバートの野太い声よりだいぶ小さく細い、恐怖に震えながらもその綺麗な声は庭園によく響いた。
「っ??無礼であ「よせ、デュソルバート」……っ??」
報告を遮られた事、《公理教会》トップの一人である《教会付き剣術指南役》に対して無礼な態度を取った事にデュソルバートが声を荒げるが、男はそれを静かに制した。
「お前らしくない。お前の任務は咎人をここまで連行し、俺に引き渡す事。それに、『騎士は常に冷静であるべし』……そう教えたはずだが?」
「……申し訳ありません」
諭されて冷静さを取り戻したデュソルバートはやや兜をうつむかせて謝罪した。
「さて、お前はもういい。最高司祭様から別命があるまで待機だ。飛竜も疲れているだろう。ゆっくりと休め」
「はっ……では、失礼します」
デュソルバートは再び飛竜に跨ると、塔の30階にある飛竜の発着台に戻って行った。
「さてと、それじゃあ行こうかアリスちゃん」
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