高校2年
第四十ニ話
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を見ると、とても大丈夫だとは思えなかったが、ただ童顔に滲み出る闘争心だけは依然として衰えていなかった。
「この回は結構こいつら、振ってきてるからな。前の回までストライク勝負意識してたけど、ここは腕振ってな、絶対中途半端に置きにいくなよ。ねじ伏せるぞ。」
「最初からそのつもりじゃい」
美濃部がつっけんどんに返し、宮園が捕手のポジションに戻る。
<4番ファースト安里君>
逆転の大チャンスで打順は4番。
南学サイドの期待は、否が応でも高まっていく。
「「「かっとばせー!あさと!あさと!
あさと!」」」
ハイサイおじさんの大応援が、また一段と大きくなった。声がビリビリと空気を震わせてくる。
そのプレッシャーの中で、美濃部は小さな体でマウンドに立つ。
(……離島からとか何とか知らんけど、俺らだってな、甲子園目指してきたんじゃい!)
こういう厳しい状況で燃えるのが、この美濃部という少年だった。鼻っ柱が強い。ビビったりなどしない。
スパァーン!
「ストライク!」
キーン!
「ファール!」
4番・安里に向かって、力いっぱいのストレートを投げ込んでいく。130キロ半ばは出ていそうなストレート。170センチの高校生としては、中々の球速である。完全にバットを押し込んでいる。
そして3球目。追い込んでから投げるのは、やはりこのボール。鋭く振られた右腕から放たれたボールは、手元でグン、と斜めに曲がった。
ブン!
「ストライクスリー!」
これまで散々、見送られていた、ストライクからボールになる勝負球のスライダー。このチャンス、攻める側も気負ったのか、安里のバットは綺麗に空を切った。安里は天を仰ぎ、ショートバウンドを捕球した宮園がすかさずタッチ。
「よっしゃァーー!」
マウンド上では美濃部が吠えた。
ピンチの場面で欲しいのは三振。理想的な形で4番打者をねじ伏せ、ツーアウトとなる。
(……よく振らせた……!!)
三龍ベンチでは浅海が小さく拳を握った。
このピンチを切り抜けるビジョンが見えてきた。
何故なら次の打者は……
<5番ピッチャー翁長君>
試合途中からリリーフして5番に入っている翁長。この秋の大会は、そもそも打数が少ないとは言え未だノーヒットの打者である。体も小さく、投手という事からも、美濃部を打てる打者とは思えない。
「おじいちゃん、代打送らんと?」
スコアをつけるマネージャーに尋ねられ、神谷監督はカッカッカと笑った。
「今日こいつはノッとるけんなぁ。何か打ちそうな気ぃするんよ。」
「……おじいちゃんのそういう勘、よく当たりますけんね」
二人とも、笑った。
(どうせ誰も俺が打つとは思っとらんやろ。だからバッテ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ