高校2年
第四十ニ話
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き、ハイサイおじさんのメロディに合わせて踊り出す人間がチラホラ出てくる。
(……えげつねぇわ)
(これ、点入ったら球場壊れるんちゃうか?)
(……ライトアウェーすぎワロタ)
この応援の声量が、ピンチに立ち向かう三龍ナインの精神をすり減らしていく。
(のう、このチャンス、この声援、応えん訳にゃぁいかんやろ比嘉よ)
神谷監督がサインを送る。
比嘉は二カッと笑って、そのサインに頷いた。
そのサインは、
ズバリ、強攻。
カーン!
「!!」
「やられた……」
天秤打法から繰り出されるスイングは確実にボールを捉え、打球は鋭く一、二塁間を破った。
三塁ランナーの諸見里が悠々ホームに帰ってくる。2-1。三龍のリードは一点にまで縮まる。
「「「ドワァアアアアアア」」」
南学アルプスは蜂の巣をつついた騒ぎ。
指笛がけたたましいまでに吹き散らかされ、お互いがお互いを揉みくちゃにする。
「「「島のー子よ風に乗り♪
届けておくれ♪我らの勝利ーー♪」」」
得点時の“島唄”が鳴り響き、一塁ベース上では比嘉がアルプスに向けて大きくガッツポーズを決めた。
(上手くつながり始めたばい。この回、まだまだ点が入るぞ〜)
神谷監督はベンチの最前列に躍り出て、右手でOKサインを作った。まだ一点を奪っただけだが、その表情には実に余裕がある。精神的に追い込まれているのは、一点のリードを守りたい三龍側。それを見透かしているかのようだ。
コキン!
「ファースト!」
なおも続く無死一、二塁のチャンス。
得点の興奮冷めやらぬままに3番の当山が送りバントを決め、一死二、三塁。一打逆転のチャンスを作る。
「タイムお願いします」
このピンチに、宮園がマウンドに駆け寄った。この回既にタイムは一回とってしまった。よって、宮園一人だけしかマウンドに行く事はできない。伝令も使えない。
(一、三塁では、一点やっても良いからアウトが一つ欲しかった。結果はタイムリーで、点は入るし逆転のランナーは出す、最悪の形……さっき私が“動いて”チャンスを潰したのとは逆に、この回の南学打線は強攻策が功を奏している……これ、私が作ってしまった流れか……)
ベンチで見守る事しかできない浅海は、マウンドに集まったバッテリーを見つめた。鳩尾がまた、キリキリと痛んだ。
「浅海先生、動かんな。」
「は?どういう事やそれ?ここで俺が降りるってか?」
ベンチの方を見て、これ見よがしに言った宮園に美濃部が噛み付く。宮園はため息をついた。
「そういう意地を張ってられるうちは、まだお前も大丈夫だな。」
「当たり前やろ。あの根暗(越戸)にこんなピンチ任せられんけん。」
美濃部の顔にはいっぱいの汗。呼吸も荒い所
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