第31局
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主人より連絡があってね、君が預けた花器は無事に持ち主の手に戻ったそうだよ」
「あ、本当ですか!ありがとうございます!」
―よかったですね、ヒカル。
「道具屋の主人はえらく感心していたよ。若いのにずいぶんと物を見る目があると。しかも、価値を知ったうえで、持ち主に返却しようだなどと、立派な心がけだと」
「いやー、そんな大したもんじゃないですよ。オレが持ってるよりきっと元の持ち主のほうが大切にしてくれると思いますし」
「へぇ。塔矢先生、そこまで大した品だったのですか?」
「ああ。道具屋の主人によると、とても値段などつけられないもので、いずれ国宝に指定されてもおかしくないだけの品だそうだ」
「な!?…驚いたな、進藤、よくそんなものを見つけたもんだ」
「えっ!ヒカルが持ってたあのお皿、そんなにすごい物だったの!」
「へー、見てみたかったなぁー」
「たまたまですよ、たまたま」
何気なく問いかけた緒方は、まさかそこまでのものとは思ってもおらず、非常に驚いた。それだけの物を持ち主に返却して何の屈託もないヒカルの様子を見て、改めてこいつは大物だとの思いを深めた。
「しかし、惜しいな。それだけの品なら俺も見てみたかった」
「私もそう思っていたよ、緒方君。今日ここにいる皆は幸運だったな」
「と、おっしゃいますと?」
「うむ。本来の持ち主が、ぜひとも進藤君にお礼を言いたいということで、今日こちらに見えることになっているのだよ。その際、私が花器を目にしていない事を告げたところ、快く見せていただけることになったよ。私としても非常に興味深い」
「おお、それは嬉しいですね」
「わー、私も見たかったからよかったー!ふふふ、こんな日にいないなんて、芦原さんも残念ね」
「ほんとにな。あいつは日ごろの行いが悪いんだろうな」
今日は不在の芦原をネタに盛り上がる皆の様子を眺めながら、行洋はどこかいたずらっぽい笑みを浮かべていた。
「あなた、お客様がいらっしゃったわよ」
「ああ、明子、ありがとう。私が迎えに行こう」
行洋が自ら出迎えに行くことに軽い驚きを浮かべるのは、緒方とアキラだ。2人はどうやらかなりの大物が来たらしいと悟った。
「こちらです。どうぞ、桑原先生」
「ふぉふぉふぉ、お邪魔するよ」
囲碁界のトップの一角、桑原本因坊の登場に、室内のだれもが驚愕した。
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