5部分:第五章
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第五章
「それだけよ。今の私はね」
「そうなのじゃな」
「ええ。それでね」
「うむ。それでじゃな」
「また。行って来るわ」
パンをかじり終わりだ。傍にあった白いプラスチックのコップに野菜ジュースを注ぎ込みながら老婆に話した。
「それでね。これが終わったらね」
「復讐がじゃな」
「ええ、終わったら仕事を探すわ」
自分のことを素っ気無く話す。
「そうね。ウェイトレスでもしようかしら」
「ありきたりの仕事じゃな」
「人を殺しても私は私よ」
復讐をしてもだ。そうだというのだ。
「だったら。生きないとね」
「生きる為には仕事じゃな」
「カレッジも退学したし」
そのこともだ。今はどうでもいいといった感じであった。
「だったらね。働くしかないから」
「タフじゃのう」
「アメリカよ」
アリサは笑って言った。注ぎ込んだ野菜ジュースを飲みながらだ。
「そしてここはそのアメリカのニューヨークよ」
「だったらだというのじゃな」
「タフでないと生きられない国よ」
アメリカとはそういう国だとだ。アリサは話すのだった。
「イギリスみたいにのどかには生きられないのよ」
「そこでイギリスを出すか」
「好きじゃないからね」
イギリスはだ。そうだというのだ。
「ああしたお高く止まった国はね」
「わしは一年程イギリスにおったがのう」
「どうだったの?それで」
「いや、食べるものが酷かった」
老婆から見てもだ。そうだというのだ。
そしてだ。アリサにこんなことも話した。
「しかもじゃ」
「しかも?」
「雨と霧がやたら多くてじゃ」
その二つはロンドン名物だ。イギリス人は杖の代わりに傘を持ち歩くとまで言われている程だ。霧の都の仇名も伊達ではないのである。
「いや、あまりよくはなかった」
「やっぱりね」
「出稼ぎに行ったがそれで帰った」
その事情を話すのだった。
「そういうことじゃ」
「そういうことね。じゃあ私はね」
「ニューヨークにおるのじゃな」
「そうするわ。復讐が終わってもね」
「わかった。ではじゃ」
「ええ。まずは復讐をするわ」
アリサはまた言った。
「それからよ」
「わかった。それではじゃな」
「また行って来るわ」
こうしてだった。彼女はだ。
四人目のところに向かった。今度は車に乗ろうとしていた褐色の肌の男の傍に来てだ。ショットガンをいきなりぶっ放したのである。
ショットガンを至近で受けてだ。男はだ。
すぐに腹から内臓をぶちまけてだ。鮮血の中に倒れた。
その彼を見下ろしてだ。アリサは満足した笑みを浮かべていた。しかしだ。
彼がアリサを見てだ。こう言ったのを聞いてしまったのだ。
「ヘンリーの奴、何でこんな女を俺達に」
「えっ!?」
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