第30局
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たらかしにしてこんなところで碁を打ってるなんて。しかももう終わってる碁じゃないっ!いつまでも何してるのよっ!」
あかりは盤面をチラッと見ると、おもむろに白石を手に取った。
「こっちはここを突き出せば、ここの黒石全滅だし」
「あ…」
「こっちはこのハネダシで、抑えれば次は両あたり、手抜きは地が大損でいずれにしても黒おしまい」
「ゲ…」
即座に打たれたあかりの手を見て、絶句する囲碁部の面々と頭を抱えるヒカル。
「あちゃー…」
−さすがあかり、見事なとどめですね!?
日高もまた驚愕していた。
−そ、そんなこの子、今チラッと見ただけなのに、盤面を一瞬で把握して黒の急所を捉えたっていうの?いくら手数が少ないからってそんな…。この子はいったい…。
静まり返った室内の様子に、あかりはようやく気付いた。
「あっ!私ったらごめんなさい!あまりにひどい碁だったんでついうっかりっ!!」
「…あまりに…」
「…ひどい碁…」
「あかり、あかり、それフォローになってないから」
「あ、いや、その、私!」
気まずい沈黙を破ったのは、日高の笑い声だった。
「あはははははははははっ!面白いわね、あんたたち。ね、あなたって進藤の彼女?」
「えーっ、彼女だなんてそんな!」
大笑いする日高と、顔を真っ赤にして照れるあかり。落ち込む3人をよそにすっかり室内の空気が変わり、ヒカルは力なく声をかけた。
「えっと、日高先輩…。もう俺たち帰ってもいいかなぁ?」
「ええ、そうね。あとは囲碁部で片付けるわ」
日高はようやくおさまってきた笑いをこらえながら、そう答えた。
「迷惑をかけたみたいで、ごめんね」
「気にしないでいいですよ。ほら、あかり、帰るぞ」
「あ、待ってよ。し、失礼しましたー」
立ち去る2人を見ながら、日高は落ち込む3人にあきれた視線を向けた。
−嫌がらせをする相手を完全に間違えてるわよね、こいつら。ま、自業自得か。さて、どうしてくれようかな、まったく。
3人の試練は、まだ終わっていないようだった。
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