高校2年
第四十一話 トリックプレー
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なら、上原にキャッチボールさせとかにゃいけんな。俺、言うてくるわ」
「お、頼む」
宇良がブルペンから出て行くのを見送りながら、知花は次々とブルペン捕手に投げ込み、短い時間で肩を作っていった。
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「……焦るんじゃないぞ」
グランド整備の間に、三龍ベンチでできた円陣。浅海が中心に立って、ナインを諭していた。
「確かに南学打線はしぶといし、あの遅いピッチャーには完璧に抑えられている。でも、現状リードしてるのはウチだ。このまま試合を9回まで運んだ場合、勝つのはウチ、負けるのは相手。リードしているこちらが浮ついてはいけない。良いか?」
「「「ハイ!」」」
「しっかり落ち着いて、次の一点を取りにいこう。守備は一つ一つのアウトを丁寧にとるんだ。」
「「「ハイ!」」」
円陣が解かれると、浅海はタオルを手にとって顔の汗を拭いた。静かな試合展開、そして季節は晩秋なのに、汗がやたらと吹き出している。浅海は、自分自身も落ち着こうと息をついた。
(……このまま9回まで行けばって……多分、このまま終わらせちゃくれないから、生徒も焦ってるし、私も焦ってるんだけど……)
鳩尾がキリキリと痛んだ。この試合だけは何としても勝ちたい、勝たせたい。リードしている分だけ、欲が出る。しかし、どこか上手くいっていないような気がして、どうにももどかしい。
(次の一点が欲しい……)
浅海は唇を噛み、グランドの中を見つめた。
整備のインターバルが明け、南学ナインがベンチから飛び出してきていた。
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<1番セカンド渡辺君>
6回表、三龍の攻撃は1番の渡辺から。三龍打線は3回にリリーフした翁長からまだ1人のランナーも出しておらず、これでようやく2巡目に入る。引っ掛けたゴロ、フライを連発し、極端なスローボールの前にドツボにはまっていた。
(そろそろ追加点が欲しいな。こんな遅い球にいつまでも手玉にとられよったら恥やけ)
渡辺はここで主将の気概を見せる。
俺に続け。その思いは言葉ではなく、結果で語るのみ!
カーン!
浅海がしきりに言ったように、遅い球を引きつけに引きつけ、手元まで呼び込んで叩いたセンター前ヒット。目の覚めるような打球に三龍アルプスはドッと湧き上がる。
(……やっぱりこの子……頼りになる!)
ベンチに向かってガッツポーズした渡辺に、浅海は大きく拍手を送った。無死一塁。苦しめられてきた翁長からようやく安打が生まれ、追加点のランナーが出る。
<2番ショート枡田君>
「よっしゃァー!仕事するよ仕事をー!」
渡辺に続かんと、気合いの声を上げながら枡田が打席に入る。次の一点がどちらに入るのか、それはこ
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