第百話 加藤との話その十三
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「あそこまで嫌われる人にはね」
「ベートーベンって嫌われてたんだ」
「敵だらけだったわよ」
文字通りそうだった、クラシックの作曲家で歴史に名を残した者の中では彼とワーグナーは敵の多さでは双璧であろう。
「実際にね」
「それも何かね」
「よくないでしょ」
「偉人も人間だなんだね」
「だから人なのよ」
『偉人』だというのだ。
「尊敬出来る部分と出来ない部分があるのよ」
そういうことになるというのだ、そしてだった。
母はその食事を食べながらだ、我が子にこうも話した。
「あと自分で尊敬しろとか言う人は尊敬しないことよ」
「それ自分で言うの?」
「そう、そんなこと言う人はね」
とてもだというのだ。
「冗談ならいいけれど」
「本気で言う人だったら」
「絶対に尊敬しないことよ」
「自分で自分を尊敬しろとか言うってね」
「はっきり言ってそうした人は絶対に尊敬されないわ」
間違っても、というのだ。
「だからあんたもね」
「そんな人は尊敬したら駄目だね」
「軽蔑することよ」
それだけでだというのだ。
「人間尊敬されるとか気にしたら駄目よ」
「自然体?」
「そう、ありのままでいればいいのよ」
「そうなんだね」
「そうよ、お母さんもお父さんもそんなこと言わないでしょ」
上城にだ、自分を尊敬しろなどというのだ。
「絶対に」
「そういえばそうだね」
「そんなこと言う下らない人間にはなりたくないのよ」
母にしても父にしてもというのだ。
「だからよ」
「それでなんだ」
「あんたもそうはならないでね」
「わかったよ、じゃあ」
「ありのままで生きるの」
それが大事だというのだ。
「人の尊敬されるとか思ったらかえって駄目よ。あとね」
「あと?」
「あんた友達や彼女は大事にしなさい」
こうも言うのだった、我が子に。
「意地悪とかはしないの」
「僕そんなことしないよ」
「そうよね、けれどね」
「これからもなんだ」
「そう、これからもよ」
今からもだというのだ。
「他の人に意地悪とかはしないことよ」
「絶対にだね」
「ええ、確かにあんたはそんなことをする子じゃないけれど」
だが念の為だ、母としてそれはわかっていても一応は念の為にこのことを強く言ってそれで忠告するのだった。
「気をつけてね」
「うん、それじゃあね」
「そういうことよ、さてデザートはね」
「今日は何かな」
「アイスよ」
微笑んでの言葉だった。
「アイスクリームよ、バニラよ」
「あっ、いいね」
「そうでしょ、あんた好きでしょ」
「うん、嬉しいよ」
母親だからこそよく知っている、息子の好みは。上城もそのことをわかってくれている母に笑顔で応えた。
「有り難うね」
「お母さんの分も
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