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星の輝き
第29局
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別の世界の住人のようなものだった。それなのに、そんな連中が、同じ中学の下級生にいるということを思い知らされた。


 惨めだった。

 お人よしの連中は、ずいぶんあっさりと手のひらを返した。最初の頃の批判はすっかり忘れてしまったようだ。そんな連中のことも気に食わなかった。だから、話を持ちかけられた時、伊藤はすぐに飛びついた。生意気な下級生に、思い知らせてやると。









 ヒカルは、囲碁部の1年の奥村に連れられて、(ユン)先生の元へ向かっていた。なんでも、先日の件でヒカルに話があるらしかった。

−あー、なんだよもう、めんどくさいなぁ。
−この前のお説教でしょうか?
−げっ!部活邪魔しちゃったからかっ!あー、帰っちゃおうか?
−だめですよ。ちゃんと話せば分かってくれるはずです。
−そうだといいんだけどなぁ。

 だが、奥村はどうも対局室とは別の場所に向かっているようだった。

「あれ?対局室じゃないの?」
「ああ。こっちに昔の部室があるんだ。今は囲碁部の倉庫みたいになってるんだけど、そっちで待ってるって。あ、ここな。中で待ってるはずだから。それじゃ俺部活行くんで」
「あいよ」
−しかたねぇ、さっさと終わらせるか。
−さ、行きましょう、ヒカル。

「失礼しまーす。進藤です」
「よお、きたか。悪いな、先生は入れ違いになっちまった」

 中に入ったヒカルを待っていたのは伊藤だった。

「あれ、あんたは?」
「…口が悪い奴だな。囲碁部2年の伊藤だ。(ユン)先生からの伝言だ。この前、囲碁部の部活の時間を部外者が使ったんだ。代わりにここの片付けをしろってな」
「ここの片付けーっ!?」

 ヒカルはうんざりとして声を上げた。それほど広くはない部屋だったが、部屋の中は囲碁の道具や、各種書物、雑誌、トロフィーなどでゴチャゴチャだったのだ。
−うへーっ。こんなとこの片付けをしろってかー。
−まぁ、ヒカルが邪魔したのは確かですしねぇ。
−なんだー、おまえだってノリノリだったくせに!?

「ほら、ぼさっとしても終わらねえぞ。さっさとはじめろよ」
「へいへい」

 ヒカルは仕方なく、まずは雑誌類から片付けるかと書棚に向かった。どうにも納得いかないが、佐為が手伝えるはずもない。適当に片付けてさっさと帰ろう。

−昔の棋譜に、古い囲碁雑誌か。こっちの定石の本もえらい古いなー。
−ヒカル、沢山ありますねー。
−…読む暇はないからな、佐為…。

 片付け始めた様子のヒカルを見て、伊藤は席に座り、碁盤の用意を始めた。


「ついでに1局打ってもらおうか」
「え?」
「おっと、おまえは言われたとおり、片付けをやっていればいい。途中盤面なんかのぞきに来るなよな」

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