第三章
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第三章
慎太郎はだ。確かな顔でこう言うのだった。
「一歩間違えたら大怪我よね」
「大怪我どころじゃないぞ」
「死ぬのね」
「牛って大きいしな」
しかもなのだった。牛はだ。
かなり速い、牛歩という言葉が嘘の様にだ。
とにかく速いのだ。巨体で猛然と突進してくるのだ。だが闘牛士はその牛の突進をかわしてだ。そのうえで、なのである。
剣を突き刺していく。既にその剣は何本も突き刺さっている。それは徐々に増えていく。闘牛士は戦いを優勢に進めていた。
その彼と牛を見ながらだ。二人は話すのである。
「あんなの受けたら本当に下手したらな」
「死ぬのよね」
「だから凄く危ないんだよ」
闘牛はだ。そうだというのだ。
「けれどそれでもな」
「ああして。華麗に動いてるわよね」
「服が華麗なだけじゃないからな」
その動きもだというのだ。
「いや、本当にな」
「そういうことまで考えたらよね」
「闘牛士は凄いよ」
唸る様な言葉だった。慎太郎はその言葉で言うのだった。
「命懸けだからな」
「そうよね。けれど凄く人気があるんでしょ?」
「華やかな仕事だからな」
危険はあるが非常に華やかでしかもみらびやかな服を着られる。しかもだ。
報酬も素晴しい。最後に異性にもてる。これで人気が出ない筈がなかった。
だからだ。人気があるのだ。それが闘牛士なのだ。慎太郎はその闘牛士についてだ。美和子にこんなことも話したのである。
「スペインの男の人はな」
「男の人は?」
「誰でも一度は闘牛士になりたいって思うらしいな」
「それだけ人気があるのね」
「そう、あるんだよ」
また話す夫だった。
「それだけ人気のある仕事なんだよ」
「そうなのね」
「ああ。俺もな」
ここでまた言う慎太郎だった。彼はだ。
腕を組んで微笑みながらだ。こんなことを言った。
「なればよかったかな」
「あなたが?」
「ああ、闘牛士にな」
言うのはだ。このことだった。
「それでああしてひらり、ひらりってな」
「駄目よ、それはね」
「駄目か?」
「怪我じゃ済まないわよ」
美和子は笑ってだ。夫に話すのだった。
「あなたがさっき言った通りにね」
「だからか」
「そう、だからね」
こう話す妻だった。
「止めた方がよかったわね」
「そういうことか」
「そうよ。ところで闘牛の牛だけれど」
美和子はだ。ふとした感じでだ。
夫にだ。こんなことを尋ねるのだった。
「後でどうなるのかしら」
「ああ、闘牛で死んだらだよな」
「ええ。やっぱりあれよね」
「食べられるらしいな」
実際にだ。そうなるというのである。
「美味しくな」
「そうよね。死んでそれで終わりじゃないわよね」
「あれだよ。田んぼに放って
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