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星の輝き
第28局
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「やっぱりこの手を受けたのが手拍子だったかな。手を抜いて、そうだな、こっちに手をつけたほうがよかったかな」
「…そっかー。そうだよね、そこで完全に遅れちゃったもんなー。あーん、悔しいなぁ。せっかく1回戦勝てたのに、伊角君に負けちゃうんだもんなあ」

 今回の勉強会では、先日の若獅子戦の棋譜検討を行っていた、奈瀬の口から出てきた対局相手の名前が、ヒカルにはとても懐かしかった。以前の世界、院生でともに腕を競い合った相手だ。

「その、伊角さんだっけ。院生なんだよね」
「うん、そう。院生のトップ。しかも1年以上ずーっとトップ。だからそろそろ勝ちたかったんだけどなぁ…」

 プロ試験で合格できるのは、数多くの受験生の中で上位3名のみ。現在院生トップの伊角は、まさに合格候補の一人といえた。それだけに、奈瀬は勝ちたかった。

「伊角君相手に勝てないと、今年のプロ試験は厳しくなるからなあ。どう考えても伊角君より強い受験生がいるし…。もっとがんばらないと!」
「…えーと、すみません…」

 そういいつつ謝る塔矢アキラ。そう、彼もまた今年のプロ試験受験を決めていたのだ。そうなると、院生ですらぬるいといえるアキラの実力では、他の受験生たちを圧倒することとなる。つまり、アキラの受験により、合格枠は実質残り二つになったといえた。

「あ!ごめん、そういう意味じゃないの!強い人がプロになるのは当然だから、気にしないで!」
「そうそう、プロになるのも勝負の世界。周りは全員敵だからね。でも、とうとうアキラもプロになる決心がついたか」
「ええ。進藤に少しでも追いつくために、プロの世界でもまれてこようと思います」

 芦原の言葉に、力強く決心を語るアキラ。アキラは、今のままでは進藤に追いつくことが難しいと考えていた。

「進藤よりも先にプロの世界に入って、プロたちの中で揉まれる事で、少しでも近づいていくつもりです」

 アキラは、ヒカルとの力の差をはっきりと認めていた。何しろ、父である名人塔矢行洋を倒したのだ。今の自分では歯が立たない。
 そうだからこそ、アキラはより厳しい環境を求めて、プロの世界に足を踏み入れる決断を下したのだ。
 その言葉を聞いた芦原は、複雑な気持ちになった。

「…いやー、アキラの決心はともかくとしてさ、なんか客観的に聞いたらすごい台詞だよね、それ…。アマの同級生を倒すためにプロになるかあ…。しかも、それをまったく否定できない…。そもそも、名人や緒方さんを倒したアマチュアがいるなんて知られたら、大騒ぎになりますよ」
「ふふふ。まったくだ。プロを平気で倒すアマチュアか…。あまり言いふらすなよ、芦原」


 今回は芦原と一緒に緒方も勉強会に参加していた。塔矢名人は、勉強会の直前までいたのだが、都合があり出かけてい
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