第28局
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ト碁?」
「塔矢先生はなされないよ。オレは極たまにだな。もっとも、対局よりも棋譜を見ることのほうが多いが」
突然飛んだヒカルの話に戸惑いつつも、緒方は答えた。その言葉を聞いて、ヒカルは少し安心した。アキラはすでに知っているが、名人と緒方が知っているかどうかが不安だった。これで少なくとも緒方は知っている可能性がある。
「じゃあ、saiって知ってますか?」
「ほう、あのsaiか」
「…知ってるさ。話題の謎の打ち手だ…。アキラ君が対局したよ。以前研究会の最中にね。まさか、進藤、おまえの師匠はsaiか!」
「そうです、オレの師匠です」
驚く名人たちを見ながら、ヒカルはほっと息をついていた。名人たちがネットのsaiをこの時点で知っているかどうかが不安だったのだ。
ヒカルは、以前のことから、今の時点で塔矢名人がネット碁をしていないだろうことは分かっていた。以前の世界で名人がネット碁を始めたのは、ヒカルが中学3年の時、名人が入院していた時だったからだ。
先日のアキラとの対局で、おそらくsaiの存在を知っているだろうとは思っていたが、まさかあの対局を直接見ていたとは分かるはずもなかった。偶然アキラの名前を見つけたときに、対局を申し込んだ甲斐があったというものだ。
「saiはプロではないのだね?」
「はい。プロではありません」
「saiについて教えてくれるかい?」
「…すみません。もしかしたら、いずれ話すことがあるかもしれません。ですけど、今は話ができません」
「…オレはてっきり進藤がsaiの正体だと思っていたんだが…。進藤ではないんだな?」
緒方の言葉にヒカルははっきりと頷く。
「オレじゃないですよ。佐為はオレよりも全然強いです。俺に囲碁を教えてくれたのは佐為です。…ただ、今のあいつはオレとしか会えません。…他の人とはネット碁でしか打てないんです」
ヒカルの言葉に、室内には緊張感が漂った。
ヒカルは、小さな真実をちりばめながら、名人たちをうまく誤解させようとしていた。あかりと奈瀬、そして佐為は、今のヒカルの話をどうとられるかと固唾を呑んで見守った。
−saiの力は確かに進藤以上のものを感じた。二人と対峙した僕にはわかる…。そうか、saiが進藤の師匠。あれだけの人物に教わったというのなら、進藤の実力も納得できる。…あそこまでの碁を打てるのに、体が悪いのか…。お年なのか、病気なのか…。
アキラが下した推測。塔矢名人、緒方もまた同様の推測に至っていた。
−なるほど…。実生活では身内しか会えず、対局はネットのみの人物か…。それであれば、引退したプロ棋士の誰かという可能性もあるが…
−進藤君が名を明かせないというのは、まだ何か理由があるか…。が、今それを明かせというのは時期尚早か…
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