高校2年
第四十話 しっかりせぇよ
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第四十話
「ストライクアウトォ!」
「よっしゃ!」
美濃部がマウンドを駆け下りる。
2回裏も三者凡退。自分のホームランに乗ってきたのか、腕がよく振れている。
しかし、南学ベンチでは、完全に抑え込まれている自軍打線に対して神谷監督が納得の表情を見せていた。
(この回も三者凡退とはいえ、17球投げさした。ボール球のスライダーにクルクル回っちょらんし、ストライクゾーンでしっかり勝負できとうけ、必ず今後チャンスはある。)
神谷監督は守備に向かう自軍選手を見る。
いつかチャンスは来る。となれば、大事なのはそのチャンスを生かす為に、点差を離され過ぎずついていく事だ。
(サイドの安里に対して、何も苦にしよらん辺り、敵さんは真っ直ぐには強いの。ここは早め、早めでいかんといけんわい。)
老将・神谷監督は、まだ3回にも関わらず動いた。
<南海学園高校、選手の交代をお知らせします。5番、ファースト知念君に代わりまして、翁長君が入り、ピッチャー。ピッチャーの安里君が、ファースト。4番ファースト安里君、5番ピッチャー翁長君、以上に代わります……>
場内アナウンスが響いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
南学の2番手投手は翁長。初戦でもリリーフとして登場した、背番号17の左の変則投手だ。サイドスローともサブマリンともつかない、何とも微妙な所から腕を出してくる、掴み所の無いピッチャーである。
(まだ3回なのに、わざわざ今日スタメンに抜擢した5番打者をベンチに下げてまでピッチャーを代えてきた。判断が早いな……)
浅海が見守る中、翁長に相対するのは1番・主将の渡辺。州大会、ここまで5打席連続でヒットを放っている。三龍打線で最もノッている打者である。
パシッ
「ストライク!」
初球を見送った渡辺は、翁長の投げる球に度肝を抜かれた。どうやら、ストレートで入ってきたらしいが、一見そうだと分からなかった。
(おっそ!何やこれ、ストレートがお辞儀しとーやんけ!これがホンマに高校生の投げる球か!?)
それもそのはず、この翁長の最大の武器は“遅球”。体の回転と腕の振りがバラバラなエネルギー伝達効率が実に悪い投げ方で、100キロ台、速くても110キロ台の中学生以下のストレートを投げ込んでくるのだ。
パシッ!
「ストライク!」
そしてそんな球をストライクゾーンに集めるコントロールだけはしっかり持っている。渡辺は手を出せずに追い込まれてしまった。
(こんだけ遅いと、絶対引っ掛けちまうわな。それはいけんわ。ライト方向を狙って……)
渡辺は手元ギリギリまで引きつけようと意識する。翁長が三球目を投げ込んでくる。
そのボールは、今までより更に遅かった。
(
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