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戦国異伝
第百六十一話 紀伊へその十四
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「今から」
「随分と落ち着いておられるが」
「比叡山でもそうでしたので」
 だからだ、粛々としているというのだ。
「このことで高野山にあれこれすることはありませぬ」
「そうか、それは何よりじゃ」
「しかしです、どうも前から聖達の中には素行の悪い者もいる様ですが」
 ここでだ、玄以は鋭い目になり法主に述べた。
「そのことは」
「わかっておる、本山としても気に病んでいたが」
「そこまで目がいきませんでしたか」
「これも拙僧の不徳の致すところ」
 法主は項垂れる顔で玄以に述べた。
「申し訳ない」
「ですな、それでは」
「高野山も出直す、真の意味で空海上人の教えられていることを伝えていく」
 空海は今も生きているとされている、その為法主も彼についてはこう言うのだ。
「都、天下の裏鬼門を守る寺としてな」
「そうして頂ければ何よりです」
 玄以も法主の言葉を受けて強い顔で応えた、そうしてだった。
 今の話は終わりすぐに玄以は高野山の不穏分子達が織田軍に戦を仕掛けることを伝えることにした、そこで出て来たのは。
 煉獄だった、玄以が法主の前を後にするとすぐに彼の前に出て来たのだ。
「用だよな」
「うむ、すぐに殿にお伝えして欲しいことがある」
 玄以は不敵な笑みを浮かべて言う煉獄に彼は確かな笑みで告げた。
「高野山の本山の断に従わぬ者達が織田軍に向かっておる」
「そうか、それじゃあな」
「では頼むぞ、途中何が出て来るかわからぬがな」
「ああ、そのことは安心してくれ」
「誰が来てもか」
「わしに適う奴がいるかよ」
 その不敵な笑みでの言葉だった。
「そうだろ」
「ふふふ、自信はあるか」
「わしは飛騨者きっての剣の腕だからな」
「しかし御主だけではな」
 一人ではだというのだ、玄以は煉獄の剣の腕、忍術には信頼を置いていたが慎重な彼は煉獄だけを行かせなかった、それでだった。
 拳、鞠、煙の気配も察していた、それで彼等にも声をかけたのだった。
「拳」
「ここに」
「鞠」
「うん」
「煙」
「お呼びですね」
 声がかかるとすぐに三人も出て来た、三人は煉獄と並んで玄以の前に出た。玄以は四人になったところであらためて告げた。
「ではすぐに殿に伝えてくれ」
「畏まりました」
「すぐに行って来るね」
「お任せあれ」
 今度は三人が応えてきた、そしてだった。
 その四人にだ、玄以は今度はこう言った。
「御主達四人で殿に伝えてくれ」
「玄以さんも心配性だな、わしだけでも充分だっていうのにな」
「いや、相手は並の者達ではない」
 玄以は彼の読み通り不敵に言った煉獄にこう返した。
「雑賀衆はいないというが」
「あの連中か」
「左様、あの忍の様な動きは厄介じゃ」
 どう見ても只の百姓ではな
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