第百六十一話 紀伊へその八
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「近頃高野聖達の中に悪き者が混ざっております」
「野盗の様なことをしたりしておるな」
「泊めてもらった家々での狼藉なぞ」
そうした卑しい行いをしている者がいるというのだ。
「それが問題です」
「それを治めるのじゃ、そしてじゃ」
「高野山自体もですか」
「僧兵だの荘園だのを取り上げてな」
比叡山や他の寺と同じ様にというのだ。
「普通の寺にする」
「寺に力は持たせませぬな」
「寺はそれだけで力がある」
これが信長の寺への見方だ。
「人は信じるものが「必要でしかも寺には学問がある」
「学問自体が力ですな」
「そうじゃ、知ることは力じゃ」
寺には様々な書がある、経典もある。そうしたことを知ることもまた力だというのだ。
「力は武だけではないわ」
「だから寺には武は持たせませぬか」
「そうする、寺の本来の姿に戻す」
「本来とは」
「天平の頃じゃ、あの頃寺には僧兵も荘園もなかった」
まだその頃はなかった、荘園が出来たのは奈良に都がある頃の終わり頃だ、そして荘園が出来てからそれを守る僧兵も出来ていったのだ。
だからだ、ここはなのだ。
「僧兵は荘園がなければおらぬからのう」
「そして寺には荘園に代わって檀家を持たせますか」
「寺の上にさらに寺を置いて本山を一番上とする」
「それぞれの宗派の」
「神社も同じ様にする、そして寺社を治める奉行も置く」
信長はここまで考えていた、寺社のことを治めることまで頭に入れてそのうえで政を考え動いているのである。
「そうしていく」
「そして高野山もですか」
「その中に置くからな」
だからだというのだ。
「紀伊に入るのじゃ、高野山のことも終わらせる」
「では」
「行くぞ、紀伊に」
信長は全軍に告げた。
「勝三達と合流したうえでな」
「さすれば」
雪斎も信長の言葉に応えた、こうしてだった。
織田軍は今度は紀伊に入ることになった、その紀伊の攻め方はというと。
滝川がだ、紀伊に入る前に本陣に諸将を集めた信長に対してその紀伊のこと話す。紀伊はどういった国かというのだ。
「地侍や豪族が多く」
「これといった有力な者はおらんな」
「強いて言えば本願寺です」
今彼等が戦っているその寺がだというのだ。
「雑賀衆を門徒にし他にも多くの門徒を擁し」
「紀伊を治めておるのじゃな」
「やがては紀伊も門徒の国にするつもりでした」
「その辺りは加賀と同じじゃな」
「はい、ですが今雑賀衆は石山に入ろうとしていまして」
「紀伊にはおらんか」
「門徒達はいます」
そしてだった。
「あとは地侍や豪族達です」
「ではまずは地侍や豪族達じゃ」
信長が最初に目をつけたのは彼等だった。
「あの者達に伝えよ」
「何とでしょうか」
「織田家に加わ
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