第百六十一話 紀伊へその七
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「紀伊で奴等をたっぷりと疲れさせるぞ」
「はい、そうですな」
「それではですな」
「そうして石山を攻めさせぬ」
「そうしますな」
「そうじゃ」
まさにだ、そうするというのだ。
「まだ顕如には生きてもらわねばならん」
「そのうえで織田信長と争ってもらう」
「その為にも」
「織田家に石山は攻めさせぬ」
全てはその為だった。
「ではよいな」
「では」
「今すぐ全速で、ですな」
「逃げましょうぞ」
「今から」
「ではな」
こう話してだった、闇の者達は森の軍勢に後ろを塞がれるよりも先にだった。
駆け出した、そして。
一気に紀伊まで逃げた、それを見てだった。
森もだ、唖然として言った。
「何じゃ、あの速さは」
「馬に乗っている様ですな」
「風の如くです」
加藤も福島も驚いて言う。
「あの速さは」
「信じられませぬ」
「人の足とは思えませぬ」
「とても」
「全くじゃ」
彼等も追おうとしたが追いつけない、それは信長もだった。
すぐに騎馬隊をだそうとする、だがそれより速くだったのだ。
闇の服の者達は紀伊の方に去って行った、信長はその彼等を見て唸る様に呟いた。
「忍の動きじゃな」
「ですな、二十万の大軍がその動きをするとは」
忍でもある蜂須賀もこう言うしかなかった。
「予想出来ませんでした」
「わしもじゃ、騎馬隊を出そうと思ったがのう」
だがそれもだったのだ。
「間に合わなかったわ」
「左様ですか」
「こうなっては仕方がない」
信長は唸る様にしたまま言う。
「紀伊に行くぞ」
「そうしてですな」
「紀伊を攻め取ってからじゃ」
「石山ですか」
「こうなってしまって止むを得ぬわ」
出来ればここで本願寺の者達を倒し余力があるうちに石山を攻めたかった、しかしそれはとてもだったのだ。
「後ろに大軍があるまま攻めてもな」
「どうなるかわかりませぬな」
「だからじゃ、こうなれば紀伊も手に入れてじゃ
そうしてだというのだ。
「あの国も治めるとしよう」
「紀伊をですか」
「あの国も豊かじゃ」
紀伊は山が多いが海も河もある、その為港も田もかなり多いのだ。しかも紀伊はそれだけではなかった。
「高野山もあるしのう」
「ではあの山のことも」
「ついでになるがここで治めておく」
雪斎に答える。
「そうするぞ」
「わかりました、高野山ですか」
高野山のことについてだ、雪斎はこう言った。
「あの山もまた都を守る山ですが」
「都の裏鬼門じゃな」
「左様です、それだけに重要な山ですが」
「最近はのう」
「はい、厄介なこともあります」
雪斎は曇った顔で述べた、その高野山のことを。
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