第一物語・後半-日来独立編-
第七十二章 竜神《4》
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
命運を託すなどまだまだ早過ぎる。
神に対する挑発が竜神を央信へと引き付けた。
張り付いているセーランなどお構い無しに、獲物を捕らえる獣の如く竜神は吠えながら行く。
砲撃をするべきか。
各戦闘艦を指揮する隊隊長達は選択を迫られ、気持ちの悪い汗を流す。
咆哮を放つ竜神の影響か、地上の建物や停泊している艦船は微かに揺れている。
顔を上げた央信が見る先。竜神が見えた。
目と目の間には日来の長も見え、必死で離れないように踏ん張っている。
「何処までいけるか分かんねえけどやるしかねえ!」
突き刺した憂いの葬爪の力を、一体何処まで引き出せるのか分からない。だが、やらなければならない。
想像する。
竜神の身体を突き刺す、大きく、太い頑丈な杭を。
天からその杭は落ちてきて、重量と落下の勢いが混じり合い、動きを止めるべく神の身体を貫く様子を。
合計五本の杭。
セーランの脳内に構築される想像という名の図は立体的であり、きめ細かく構築されていく。
形も色彩も、大気の流れさえも想像する。
想像が鮮明なもの程、憂いの葬爪の能力は質を増す。
慣れていなければ難しい。
しかし竜神はゆっくりと時間を掛けてくれる程優しくは無く、進むのを止める気配は無い。
仕方無く不完全なまま急ぎ憂いの葬爪の能力を発動させた。
竜神に刺した憂いの葬爪が淡く光りを放ち、傀神の流魔を元にセーランの想像を具現化させていく。
時間は掛からず、流魔が集結し現実空間内に現れる巨大な杭。
見上げる者達は何故杭が現れたのか分からず混乱するも、杭が竜神の上に現れたことからその後に起こる事態は想像出来た。
始めはゆっくりと。次第に速度を上げていき、重力に引っ張られた巨大な青い杭は吹く大気の風をもろともせずに竜神へと落ちた。
木の板を割ったような音を大きくした感じの音が、連続して五回鳴り響いた。
竜神を貫いた杭はそのまま地上へと刺さる。
広い貿易区域だが、物資を詰めたコンテナや、停泊している艦船。仮設の建物があるが、杭はそれらを無視して押し潰す形で落ちる。と思われたのだが、不思議なことに竜神を貫く杭は竜神以外は貫かなかった。
竜神以外のものが現れた杭に触れると、透き通るように杭が行くのだ。
目を疑うような光景に驚く者は少なくない。対するセーランは浮かない顔で。
「幾らか力の知識は宿り主になると同時に頭に刷り込まれる、つっても感覚がよく分かんねえな」
憂いの葬爪で竜神の流魔を吸収しつつ、現れた杭を見た。
誰の目から見ても杭は竜神に刺さっている。しかし竜神は刺さっていながらも央信を仕留めようと、無理にでも身体を動かし、連動するように杭が揺れ動く。
竜神に深く刺さってはいるものの、杭が壊れないという保証は無い。
「
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ