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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第十三話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その7)
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。そして外部からの面会も同様です」
「……」
政府の許可が有れば問題ない。つまり政府の許可を面倒くさい、或いは侯爵夫人との接触を政府に知られたくない等と考える人間を排除しているだけだ。これも特に問題は無い筈だ。今日以降、侯爵夫人を利用しようという人間はいないだろうからな。むしろ嫌な客が来ても追っ払う口実に使えるだろう、“妾、政府から人と会ってはいけないと言われていますの、ホホホ”。

「三つ、現在、この屋敷に居る使用人は全て解雇。これ以後は政府が派遣した使用人が侯爵夫人のお世話をします」
所領が減ったのだ、政府が使用人を派遣してくれるとなればその分だけ経費が浮く。俺なら大喜びだ。何が高いと言って人件費ほど高いものは無い。ついでに使用人の食費は政府持ちにしろとか言ってやれ。リヒテンラーデ侯も嫌とは言わんさ。なんなら俺が説得してやる。

……顔色が変わっている。まさかとは思うが処分を受ける事は無いと思っていたのか? 一体何を考えている?
「陛下の御心がそのようなもので有るとすれば、なぜ妾がそれに逆らいましょう。一日の例外もなく陛下に忠実であった妾です。ですが、どうして陛下はご自分でその旨を妾にお話し下さらぬのか。妾はそれが無念でなりません。陛下もあまりに御無情でいらっしゃる」

ウンザリした。逆らわない? どうして自分で言わないのか? 会えば必ず自分は無罪だと言い立てて許しを得ようとするからに決まっているからだろう。それこそが自分が愛されているという証なのだ。目の前にいる女がその証を得るチャンスを逃すはずが無い……。

まさか、それが狙いなのか? だからこんな馬鹿げたことをした? フリードリヒ四世の関心を引くために、彼をここへ呼ぶために? だとしたら馬鹿げている。この女を哀れだとは思う、だが同情は出来ない、もう茶番はたくさんだ!

「陛下は御多忙なのです」
「御多忙?」
「そうです」
俺の言葉に侯爵夫人が嘲笑を浮かべた。

「ああ、さほどに御多忙でいらっしゃいますのか? 酒宴で? 狐狩りで? 賭博で? いえ何よりもあの女の元へお通いになるので御多忙なのでしょう」
「その通りです、良くお分かりですね。何と言っても心映え優しく美しい方です、陛下を羨んでいる者は多いと思いますよ」
リヒテンラーデ侯が俺を咎めるような目で見た。余計な事を、と思ったのだろう。その余計な事の所為で侯爵夫人の顔は明らかに変化していた。憎悪、狂気……。

「あの女……、あの女が猫を被って……、陛下のお心を盗んで、そして妾に優越感を誇示しようとしている! ああ、あの女、あの女のしたり顔を引き裂いて喰い破ってやりたい」
宙を睨みながら侯爵夫人が呻いた。人間の持つ負の感情が形になれば今の侯爵夫人になるだろう。こいつを人に戻すのは容易じゃないだろうな。

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