第十三話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その7)
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爵家が代替わりをしましてな。彼はエーリッヒ・フォン・ブラウンシュバイク、当代のブラウンシュバイク公です」
「そう言えば、そんな話を聞きましたわ。ブラウンシュバイク公が物好きにも平民を養子に迎えたとか……。そちらの方がそうですの」
嘲る様な笑みだ。面白い玩具でも見つけた様な表情だな。いたぶって鬱憤を晴らしたいのだろう。今回の一件で俺がラインハルトの側に立ったことは皆が知っている。いわば俺はグリューネワルト伯爵夫人の庇護者なのだ。侯爵夫人にとっては絶対に許せる相手ではないだろう。
「エーリッヒ・フォン・ブラウンシュバイクです」
「せいぜいお励みなさいましね。でも賤しい平民に貴族の務めが出来ますかしら」
艶やかに毒を込めて笑う。うんざりだな、十年以上男に顧みられないと女もこうなるのか……。寒気がしてきた。フリードリヒ四世の取った行動は止むを得ないものだとは思うがもう少し何とかならなかったか……。毒を吐きつけられるこっちの身にもなってくれと言いたい。先程まであった彼女への憐憫はあとかたもなく消えていた。
「そこまでになされよ、侯爵夫人。公爵は陛下がエリザベート様の婿にと認められた方ですぞ」
「……」
リヒテンラーデ侯が苦い顔をしている。おそらく俺と同じ気持ちなのだろう。
「今日ここに来たのは今回、侯爵夫人がコルプト子爵と伴に起こした騒動についての処分を申し渡す為です。陛下は次のように処分を決めました」
処分の言葉にベーネミュンデ侯爵夫人の顔が強張った。まさか不問に付されると思っていたのか?
「処分とはどういう事です、国務尚書。妾に何の罪が有ると」
「見苦しいですぞ、侯爵夫人。既にコルプト子爵は全てを自供しました。夫人がコルプト子爵と語らってグリューネワルト伯爵夫人を追い落とそうと策した事、ミューゼル大将を失脚させミッターマイヤー少将を殺害しようとした事は分かっているのですぞ」
「出鱈目じゃ! 命惜しさに妾に罪を押付けたのです!」
「グレーザー医師の証言も有ります。それらは全て調書に取られているのです。悪足掻きは止める事ですな」
「……」
侯爵夫人がギラギラした目でリヒテンラーデ侯を睨んでいる。碧という色がここまで禍々しく見える事は無いだろう、寒気がする様な目だ。リヒテンラーデ侯も辟易している。
「宜しいですかな? 一つ、以下の五か所の荘園を召し上げる。メードラー・パッサージュ、アルンスベルク、アルトナ、ハールブルク、ワンツベック」
「……」
五か所の荘園を奪われたがまだ侯爵夫人には同程度の荘園が残されている。皇帝が寵姫に与えた荘園なのだ、いずれも豊かさでは定評がある荘園だ。経済的に困窮するなどという事は無い。笑って許せるさ、その程度の計算は出来るだろう……。
「二つ、政府の許可なしには外出を禁じます
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