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剣の丘に花は咲く 
第三章 始祖の祈祷書
第七話 侵攻
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こった小競り合いですぞ」
「そう思う者は今この場で辞職しなさい。どこが誤解から起こった小競り合いですかっ! 考えてもみなさいっ!」

 アンリエッタは右手をテーブルに叩きつけると、呆然としている大臣達に向かって大声で叫ぶ。

「アルビオンとは不可侵条約を交わしてはずです!それにもかかわらずかの国は礼砲で艦が撃沈されたなどという、明らかな言いがかりで我が国を攻めています! しかも短時間の内にタルブ村に攻め入れるほどの戦力でもって! どう考えても前もって予定されていたことだと考えられるでしょうっ!!」
「し、しかし……」

 アンリエッタの怒声を聞いても、なおも何とかすがろうとする大臣にアンリエッタは軽蔑の眼差しを向けると、先ほどとは正反対の冷ややかな声で大臣達に言い放つ。

「わたくしたちがこうしている間にも、民たちは血を流し、兵は死んでいっているのですよ。このような危急の際に、何もせずこうして会議室で意味のない話し合いをするものに、貴族を名乗る資格はありません。わたくしは王族を名乗る者の一人としてその義務を果たしにいきます」

 アンリエッタはそう言い放つと、白いウェディングドレスを翻すと大臣達に背を向けて歩き出した。

「ひ、姫殿下っ!! お、お待ち下さい! お興入れ前の大事なお体ですぞ!」
「どきなさいっ! もうっ走りにくい!」

 会議室から出ていこうとするアンリエッタをマザリーニや何人もの貴族が押し止めようとしたが、アンリエッタはそんな貴族達に怒鳴りつけたかと思うと、ウェディングドレスの裾を膝上まで引きちぎった。 そして、その引きちぎったウェディングドレスの裾を後を追いかけてくるマザリーニの顔に投げつけた。

「ゲルマニアと婚姻関係になりたいのならあなたが結婚なさればよろしいわ!」

 宮廷の中庭に出たアンリエッタは、大声で近衛兵を呼ぶ。

「近衛! わたくしの馬車を連れて参りなさい!」

 王女の声に近衛の魔法衛士隊が聖獣ユニコーンが引く馬車を連れ王女の前に現れると。アンリエッタは馬車からユニコーンを一頭外し、軽やかにその上に跨った。

「これより全軍の指揮をわたくしが執ります! 各連隊を集めなさい!」

 アンリエッタの声に、今この国の置かれている状況を知っていた魔法衛士隊の面々が一斉にアンリエッタに敬礼した。
 ユニコーンはアンリエッタに腹を叩かれ走り出した。
 その後を幻獣に騎乗した魔法衛士隊が大声で叫びながら続く。

「姫殿下に続け!」
「続け! 姫殿下に遅れれば家名が泣くぞっ!」

 アンリエッタの後ろを次々と貴族達は追いかけていく。
 そんな光景をマザリーニは複雑な表情で見つめていた。
 いずれアルビオンとは戦になるとは思っていたマザリーニであったが、国内の準備
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