第三章 始祖の祈祷書
第七話 侵攻
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していた手を止めると、窓から見える草原に停泊した船を睨みつけた。
「あれはたぶん、アルビオンの艦隊だろう」
父のその言葉にシエスタは驚きの声を上げた。
「そ、そんな……アルビオンとは不可侵条約を結んだって……」
「しかし可能性としてはそれが一番高い。とにかくどこの国かは関係ない。入れられるだけ入れたら早く逃げろ!」
父がシエスタに怒鳴った瞬間、艦上から飛び上がったドラゴンの一匹が村めがけて飛んできた。それに気が付いた父は母を抱えると床に倒れ込んだ。その刹那、父の背中を舐めるように熱風が通り過ぎた。
窓の外では騎士を乗せたドラゴンが村の中に飛んできて、辺りかまわず家々に火を吹きかけている。
父は痛む背中に顔を顰めながらも、気を失った母を抱きかかえると、尻餅をついて呆然と燃え上がる村の様子を呆然と見つめるシエスタに怒鳴りつけた。
「シエスタっ!! 弟たちを連れて南の森に逃げろっ!!」
アルビオンのタルブ村への占領行動を告げる伝令を皮切りに、次々と暗い報告が飛び込んできた。
「タルブ領主、アストン伯戦死!」
「偵察に向かった竜騎士隊全滅しました!」
「アルビオンからの問い合わせへの返答未だありません!」
それでも会議室は、未だに何の決定も出されてはいなかった。
「ゲルマニアへ軍の派遣を要請しましょう!」
「それでは時間がかかりすぎる!今ある戦力だけでもタルブへ向かわせたほうが」
「いかんっ!軍を派遣して攻撃を仕掛けたら、それこそアルビオンに全面戦争の口実を与えるだけだぞ!」
「いやしかし―――」
「だが―――」
一向に意見がまとまらず、何も決定できない会議をアンリエッタは苦々しい顔を向ける。
こういった際、頼りになるはずのマザリーニも、外交で解決を望んでいるため結論を出しかねていた。
怒号が飛び交う会議室の中、アンリエッタは一度目を伏せ薬指に嵌めた“風”のルビーを見つめた後、決意を秘めた眼差しを今だに何も決められない大臣達に向け勢い良く立ち上がる。
音をたて立ち上がったアンリエッタに会議室中の視線が集中した。その視線に睨みつけるような視線で答えたアンリエッタは、胸を張って怒りが滲んだ声で言い放った。
「あなたがたは恥ずかしくないのですかっ!!」
アンリエッタの怒号により会議室が一瞬静まり返る。
そんな初めて聞くアンリエッタの怒声に驚き静まる中、一人の大臣が恐る恐るアンリエッタに声を掛けたが、アンリエッタは怒りに真っ赤になった顔を声を掛けてきた大臣に向けると堂々と応える。
「ひ、姫殿下?」
「今この瞬間にも国土が敵に侵されているのです! 同盟だ特使だと騒ぐ以前にすることがあるでしょうっ!!」
「し、しかし……姫殿下……これは誤解から起
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