第三章 始祖の祈祷書
第七話 侵攻
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を作れば、あの“ひこうき”とやらは飛べるのかね?」
士郎に顔を向けることなく、コルベールが声を掛けると、士郎は開けた窓を背にして立つとコルベールに顔を向けた。
「ええ、多分ですが大丈夫だとは思います。ざっとですが見た感じでは特に壊れたところはないので」
「いやっ! すごいっ! 調合は大変だろうがやってみようっ!!」
士郎の返事を聞いたコルベールは『飛行機』が空を飛んでいるのを想像したのか、ますます目を輝かせると、棚から瓶を取り出したり、ガソリンに魔法をかけ始める。
士郎はそんなコルベールの様子を見ると、口の端に浮かべていた苦笑を少し深くした後、外に出るためコルベールに背を向けて歩き出した。
「シロウ君」
しかし士郎が入口の近くまで歩いていくと、突然ガソリンが入った瓶を片手に振り返ることもせず話しかけてきたコルベールに対し、士郎は入口に向かう足を止める。
士郎はドアノブに手を伸ばそうとしていた手を身体に横に戻すと、背後にいるコルベールに振り向きもせずに返事をした。
「何ですかコルベール先生?」
「確か以前、君は自分のことを東方の出身だと言っていたね」
コルベールの声は妙に平淡な声であり、どのような感情がこもっているのか判断することは出来なかった。
そんなコルベールの様子に訝しげな顔をすることもなく士郎は返事を返す。
「それが?」
「いやなに。エルフが治める東方の地とこのハルケギニアは、ここまでの技術の差があるとは思ってはいなかったものですので」
「……俺がいたところは、魔法使いが少なかったので、代わりにそれに代わるものが急速に成長したからだと思います」
「ふむ……そう、ですか」
「……それでは」
コルベールの声が途切れたため、士郎はコルベールに断りを入れると、ドアノブに手を掛けドアを開けると外に向かう。
部屋を出ていく士郎の気配を感じたコルベールは、誰に言うともなく小さく呟いた。
「……あれは東方のものだと君は言うが……東方のものにしても、あまりにも異質過ぎるよ……」
コルベールは士郎が出て行ったドアに顔を向けると、ため息のような声をもらした。
「まるで……別の世界のような……」
トリステインの王宮にある会議室では、悲鳴のような意見が飛び交っている。
「アルビオンは我艦隊が先に攻撃したと言い張っておる! だがこちらは礼砲を発射しただけというではないか!」
「偶然の事故が、誤解を生んだようですな」
何を……
そんな会議室の上座には、俯いて座るアンリエッタの姿があった。
「何ということだ、早く誤解を解かなければ」
「そうですな、まずはアルビオンに会議の開催を打診しましょう」
何を言っているのですか…
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