それでも夜を越え、朝が来る。誰しもが生きるために
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をこうというの?
神はミュータントを許さない。両親は殺された。人間はミュータントを差別する。
弱い者は、強い者に従う。エリザは、今自由を手に入れる。
悪いことではない。決して。少年の未来を奪うことで、私は自由になる。みんな同じことだ。立場が逆転するだけ。
悪いことでは、ない。
「わ、私……なんてことを…………」
崩れ落ちるようにエリザは床に手をついた。自分の愚かさにようやく気が付いたように泣きじゃくる。神さまごめんなさい、お母さんごめんなさい、お父さんごめんなさい。魔が差したという言い訳は効かない。あの時、確かにエリザは凶器を手にし、罪のない少年を殺めようとしたのだから。
心は安らかだ。受け入れなくてはならない。自分は死ぬこともできず、運命に翻弄されるだけなのだと。そうすると、気が楽になった。エリザは涙を拭き、少し笑みを浮かべた。
自分でも驚くほど、その顔は不格好だった。
「――――――ふん」
それでも冥星は、救わない。自分は救世主などではないからだ。
所詮、運命に翻弄されるだけの一人の子供であることを認めている。
己という器に魂が宿ったに過ぎない、どこにでもいる普通の無力な子供であることを。
だからしばし待て、と誰ともなくつぶやく。
自分が無力な子供ではないことを、世界に、愚かな人類に知らしめることができたあかつきには。
この冥星が、カリスマニート帝国にお前を迎え入れてやることを。
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