どうしようもない主人公だな
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いながらこの女も生きたいのだ。
そうだろう。兄が死にたがりの者を拾うほど優しくはないのだから。
「ブーーーーーーーーーース! さっさと帰るぞ! 今度から俺が笛を鳴らしたら五秒で駆けつけろよ。いいな? わかったら返事をしろ!」
「は……はい」
「ん? なんか……まぁいいやおらぁいくぞぼけぇ」
「め、冥星さま!」
「はぁ?」
エリザは全ての勇気を振り絞って少年の前に立ちふさがった。
己の前に立つブスに対して容赦しない冥星はエリザを睨み付ける。途端に萎縮したエリザだが、不思議なことにスラスラと覚えたての日本語を冥星に伝えることができた。
「わ、私は悪口を言われることが嫌です。ブ、ブスっていわないでください」
「いやだ。ブーーーーーーーース!!」
「ううう…………い、言わないで、ください!」
「なっ! ちっ……」
海星を一睨みしたが当人は我関せずといったふうにさっさと保健室を出て行ってしまった。その顔はざまぁみろと言いたげだったことを冥星は絶対に忘れない。
ぶっ殺してやる、がその前に立ちふさがる障害を破壊せねばならない。
「わ、私にはエリザという名前が、あります。わ、私はミュータントです。こ、孤児なので奴隷です」
そこからの吐露は必要のないことばかりだった。しかし、エリザはやめない。理由は一つ、意味がわかっていないからだ。
「わ、私は男の人にたくさん触られました。でも処女です。め、冥星さま、どうか私を捨てないでください。私はあなたのためならこの身を――あぅ!」
認めたくないが、認めよう。冥星はこの女が苦手だ。バカも極めれば匹敵するほどの力を持つということだ。
握りしめた拳はあの日、誓った一つの成すべきこと成すために。
振り下ろした拳は、黙れと言わんばかりの勢いで女を殴りつけた。
「ご、ごめんなさい……ご、ごめんなさい……め、冥星さま」
「……立て、自分の足で立ち、俺を見ろ」
エリザは涙をいっぱいに溜めながら立ち上がり冥星を見た。するとどうだろう、さきほどまで恐れていた冥星という少年が、今ではただの年下の男の子だ。
「いくぞブス……今日はカレーの日だから早く帰るんだ」
「ぶ、ブスって言わないでください……」
「…………エリザ」
「…………はい! 冥星さま!」
「…………おらぁ!」
「あぅ! ど、どうして蹴るんですかぁ冥星さまぁ……」
「ブスなんだから笑うなよ、ったく」
「ひ、ひどいです……わ、私ってそんなにブスですかぁ?」
「俺が会った女の中でダントツだな」
「…………しくしくしくしくしく」
冥星は手が震えた。己のしたことは大罪だ。いつの日か必ず後悔する日がくることを知っている。
だが、それでも。
「泣くな、ブスな
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