雨濡れの日、君のを貸して
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「なぁ……、おれ買いそびれた武器あるんだけどさ〜。やっぱあっちがよかったってぇか………イングズ、ちょっと付き合ってくんないっ?」
またこいつは何を優柔不断な事を────
「断る。……雲行きが怪しくなっている上に、さっき出掛けたばかりだろう。まして無駄遣いするな、買った物をまず使え」
アルクゥとレフィアは宿部屋でそれぞれの事をしており、ルーネスは私の部屋へ来るなり我が儘な事を云う。
「いーじゃん、買ったやつ売ってギルにすればさぁ?」
「 ────元の分の半額だぞ、勿体ない」
「ケチケチすんなよぉ」
「そんなにすぐ買い換えたいなら、自分一人で行け。……私はそんな我が儘には付き合わん」
「む゙〜、いけずー。いいもんね! 一人でもっとマシな方買ってきてやるっ!」
そう云うなりドアを開け放したまま踵を返してゆく。全く……、成長しない奴だ。
────それから暫くして雨が、本降りになってきた。云わんこっちゃない。……私の足は自然と部屋を出て、宿屋ロビーへ向かう。
するとちょうどその時────入口のドアが雨粒と共に勢いよく開いた。
「う、売り切れてた……。あぁっ、やっぱあっちがよかったぜ〜」
はぁ……、びしょ濡れで戻って来て第一声がそれか。呆れる。
「 ────ほら、タオル。風邪引くぞ」
「う〜ん、どっかに売れ残りないかなぁ? あ、それともアレの方がよかったかな……! へっくしっ」
こいつ、まだそんな事を。しかもタオルを受け取ろうとせず、くしゃみまでして……。仕方ない。
「 ────へっ、何? いきなし腕引っぱんなって……!?」
不平には耳を貸さず、部屋へ連れ込んで結ばれている銀髪の後ろ髪を解き、タオルで無造作にわしゃわしゃ拭いてやる。
「わっぷ! にゃにすんだよぉ?! や、やめっ………おまえはおれの、母親かっ!?」
──── 一瞬、手が止まる。タオルの間から覗く、困ったような紫色の瞳。いつも結んでいる銀髪を勢いで解いたが、そうか、これくらいの………肩程の長さだったか。
「な……、何見てんだよ? そ、その顔で見つめんの、やめろよな! ヘンな気なるだろっ」
────何故そこで顔を赤らめる。しかも私の"その顔"とは、どういう云い草だ?
「………後は自分で拭け。私はお前の母親ではないからな」
「何だそれ! 人の髪ほどいといて、やるなら最後までやってくれよなっ」
何をむくれているのやら。かわい………いや、今のは無しだ。
「い、今笑っただろ?! どこがおかしいってんだよ………へっくしゅん!」
「可笑しくないから、さっさと体も拭いて着替えろ。────自分の部屋でな」
「ここ
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