雨濡れの日、君のを貸して
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まで連れ込んどいて、そりゃないだろー? いいよ、ここで着替えるっ」
「何を云っている、着替える物は自分の部屋に─────」
「い〜から向こう向いてろって! カゼ引かせるつもりかよっ」
「いや………なら私が出てゆく」
「ちょ、待てって……! すぐ終わるからさっ」
────こんな事なら、勢いで部屋に連れ込むんじゃなかったか。
一応、後ろを向いておく事にしたが────
「じゃ〜ん! おまえの寝巻きのやつ借りたっ。やっぱちょっとデカいな〜?」
何を、勝手な………? 思わず振り向くと、襟の部分が大きくずれて華奢な片方の肩が露出している。
下は短いスカートのようだ。髪を下ろしているせいか、無邪気な少女のようにも見える。
────おかしな話だ。
「じ……、じろじろ見るなっつってんだろ! その顔で……!」
「"その顔"と云われても、鏡などで見ない限り自分の顔はよく判らないものだ。姫様からもよく見つめられたものだが────私の顔に、"何"かあるのか?」
「自覚ないのかよ……。ヤバイんだよ、その顔! アブないんだっつーのっ」
何て云われようだ。姫様にも、実はそのように思われていたのか………?
「す……、すまん。そんなに"危険"なのか、私は─────」
「……はははっ、何謝ってんだ! これでもホメてんだぞ?」
ど、どこがだ。
「キレイすぎんだって、顔。姫さんがおまえに入れ込むのも、今なら分かるよ」
「綺麗……? それは主に、女性に対して使うものだろう」
「そんなことないんじゃね? おまえ一度じっくり鏡で自分の顔見てみろよ!……つーか、"ナルシスト"になっちまいそうだなっ!」
こいつはまた、訳の判らない事を。
「そういうお前こそ、どうなんだ。その男子らしからぬ顔────」
つい、思っている事が口を滑った。
「へっ、なに? おまえから見ておれの顔、どうなんだよ」
「中性的、というか……。お前が黙ってさえいれば、ぱっと見た感じでは男か女か判りづらい、気がする」
────私は一体、何を云ってるんだ。
「へ〜え、おれってそんな風に見えんだ……? けどそんなこと云ったら、アルクゥだってそれっぽくね? レフィアなんて、鍛冶見習いやってるとっからして逆に男勝りだよなぁ!」
「まぁ、そうだな……。だが"今の"お前は特に─────」
「かわいいですか〜っ?」
不意に腰の後ろで両手を組み、こちらを覗き込むように不敵な笑みを浮かべ、上目遣いしてくる。
「 ────かわいくない」
「へっへ〜、ムリしちゃって。……んじゃおれ、自分の部屋戻るな!」
「おい……、人の寝巻きを着たまま行くな」
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