第二部 vs.にんげん!
第19話 なんにもかくしてないっ!
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
明日も来るからな!」
そのまま、エレアノールに目で合図して退室した。
ノエルは一人、ベッドの上に取り残される。
「どうしよう……」
彼女は元通りの姿勢で横たわった。
「あたしのせいだ――あたしが悪いんだ――」
一方、廊下に出たウェルドはノエルの部屋から遠ざかり、階段前のホールでエレアノールと向かい合った。
「エレアノール、悪い! 頼みがあるんだ。面倒だけど」
「伺います」
「ノエルが早まった真似しねぇか、見ててくんないかな。やっぱあいつちょっとおかしいよ」
エレアノールは沈鬱な表情で頷いた。
「出来る限りの事をさせていただきます。手が空いている際には、必ず」
「ありがと」
「ウェルド、あなたは?」
階段を下りていこうとすると、エレアノールが呼んできた。
「煉獄に行かれるのですか? でしたらどなたかとご一緒に――」
「や、ちょっとクムラン先生んとこ行って来るわ。先生になら話せる事とかあるかも知れんしさ」
「そうですか……」
ウェルドが階段を下りきってから、エレアノールは気付いて顔を上げる。
「待ってください、ウェルド! あの方は――」
階下で、宿舎の戸が閉まる音が響いた。
エレアノールに呼びかけられていた事に、ウェルドは気付いていなかったが、彼女が言おうとした内容には途中で気が付いた。
クムランとバルデスは親友同士であったと聞く。
いつも共に遺跡に潜っていたと。
研究にいそしむクムランの傍に、いつでもバルデスがいて、護衛していたと。
そのバルデスを死地に追いやったのは他ならぬ自分と、ノエルと、ディアスではないか。
説得を頼むどころではない。
バルデスに会わなくては。
その思いにとらわれて、ウェルドは雪の中立ち尽くした。だが足は、そのままどの場所に向けても歩き出そうとしなかった。
どんな顔をして会い、何を言えばいい? ごめんな、では決して済まされない。どうすれば許される?
剰え、自分がバルデスや他の冒険者たちに突きつけた死は、ただの死ではないのだ。
生きながら腐り、痛み、悶え、苦しみ、のたうちまわり、刻々と迫り来る死がもたらす恐怖、理不尽、納得できない――生きる事にまつわる全ての苦痛と負の感情が約束された死なのだ。
バルデスはどこだろう?
先ほど姿は見えなかったが、教会にいただろうか?
教会の冒険者たちの中に紛れていただろうか。生きる気力を失くして。
そう。
生きる気力など湧くものか、そんな死を前にして。
湧くほうが残酷だ。
バルデスに会いたくなかった。あの男の傷ついた姿など見たくなかったし、彼が置かれた状況を確かめたいとも思わなかった。
どうにもならない状況下、露わになるのは、とことん、自分のエゴだけだった。
ウェ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ