暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第三十九話 凡打の仕方
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く“切った”。

(スライダー!!)

知花はピクリと動いたが、バットを出さなかった。ボールはアウトコースのボールゾーンからギュン、と勢い良く曲がり、アウトコース低めギリギリにピタリと決まった。

「ストライクアウト!」

球審が豪快に手を振り上げてストライクコール。
先頭打者を会心のスライダーで退けた美濃部は小さくガッツポーズする。

(……よう曲がるわ。確かに、低めを捨てるつもりでおらなんだら、振っちまう球やの)

知花は少し呆れたように息をついてベンチへと帰っていった。
が、しかし、スライダーには“反応できていた”。その上で、わざと振らなかった。


<2番セカンド比嘉君>

続いて打席に入るのは2番の比嘉。日替わり打線の中で、比嘉だけは2番で打順を固定されている。163cmの小柄な体を更に屈め、右手と左手の間を空けた握りでバットを低く下げた、見るからに嫌らしい構えで美濃部に相対する。

キーン!
「ファウル!」

この比嘉も三塁側へのファウルを連発する。知花が振ってファウルにしていたのとは違い、比嘉はチョコンと当てるだけ。ソフトボールのスラップのようなスイングで、ストライクゾーンの球を“受け流す”。

バシッ!
「ボール!」

そして、手元まで引きつけてバットを出す分、ボールを長く見れて選球眼が良い。釣り球に一切手を出さず、カウントを3-2のフルカウントまで持っていった。

(お前も……大人しく引っ込め!)

こういう時に、美濃部が頼るのがスライダー。
あえてストライクゾーンにねじ込んでいき、比嘉は手元にグッと食い込んでくる鋭い変化を捉え切れなかった。三塁側にフラフラとフライが上がり、サードの飾磨がガッチリと捕球する。

<3番レフト当山君>

ツーアウトとなって、南学のクリーンアップが登場する。当山は足が速い左打者。身長はこれも162cmと小さく、一塁側に足を大きく開いたオープンスタンスで体を大きく見せる。その初球。

「!!」
「セーフティ!?」

当山はセーフティバントの構えを見せ、そのままバットを引いて見送った。ダッシュしたサードの飾磨の動きを確かめたようである。

「……?」
「今度は最初からバントの構えを…」

当山は今度、バントの構えで投球を待つ。
サードの飾磨は、これにはムッときた。

(おちょくりよってからに。どうせ、バスターで打つんやろ)

美濃部が振りかぶって投球モーションに入る。
しかし、当山はバットを引かずにそのままバントしに行った。

(は!?)

飾磨が慌ててダッシュする。
当山は一応バットには当てたが、しかしコロコロとファウルゾーンにボールは転がった。
当山はニヤニヤと笑っている。

(……クッソ
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