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王道を走れば:幻想にて
第三章、その4の2:拳と杖
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感触で燻るより、どうだい、一緒に財宝の海で溺れてみないか?」
「・・・もうちょい値の張る宝石がいいなぁ」
「贅沢言うんじゃありませんっ!!!」

 パックから手を離したアダンは、そのがら空きの臀部目掛けて直刀蹴りを叩き込む。鋭き一撃に押された身体は老朽で腐りかけた手摺を打ち崩し、そのまま階下へと落下していく。身体と顔を強く打ち付けてパックはがくんと頸を揺さぶられ、そのまま意識を落とした。
 階下のそれに向かってアダンはサファイアを指で弾き、建物の彼方此方で転がる兵達を見遣る。死んだ者は一人とて居ないが、明らかな重傷を負った者が大半といえた。

「・・・全滅か。呆気無さ過ぎるぞ」
「いやそれは旦那の腕力が凄過ぎるだけですって」
「当たり前だな。何せ俺は剛力を持つ者、ドワーフだ。膂力の比べ合いで負ける事など絶対にあり得ん。自慢ではないが、昔虎と取っ組み合いになった事があってな、一刻近く組み合った末虎を縊り殺した事がある」
「へぇー・・・だから虎の刺青なんだ」
「虎殺しのアダンだ。覚えておくように、同業の者よ」
「あ、あたしはですねーーー」
「聞く必要は無い」
「へ?」

 アダンは一つ溜息を零して周りを見詰める。これまでの暴虐の余波により、宝物庫を宝物庫たらしめる、教会の宝物や遺物の多くが破損してしまっている。

(やり過ぎたなぁ・・・まともな状態を保った物が少な過ぎる。この程度の宝石じゃぁ商売にならん・・・圧倒的に量が不足している・・・)

 本業は盗賊である。盗品の売買が生業の一つなだけにアダンは落胆を隠さずに居たのだ。
 彼はそのまま俯き、それまでの激動とは打って変わった冷静な表情を浮かべる。

「嬢ちゃん。あんたも同業の誼|(よしみ)なら分かるだろう?有象無象の闇商人共はたかが一個の宝玉には目もくれん。本物の価値を知らぬ雑多な奴はまとまった量じゃないと受け取ってくれんと」
「ま、まぁそりゃぁ、知っていますよ・・・。危険冒して盗賊と遭った末に取引したのはたった一個の宝玉じゃぁ、どうも損の方が大きいらしいですから」
「うむ。だから俺と嬢ちゃんがこいつらを山分けしても、まともに売買できそうなのはほんの一握りなのは分かるよな?」
「は、はぁ・・・分かりますけど」
「なら話が早い。嬢ちゃん、ちょっとあんたの取り分を取らせてもらうぞ」
「なっーーー」

 発作的なまでに危機感を覚えたパウリナ目掛け、アダンは素早く床に転がっている剣の柄を蹴り上げ、それを掴んでパウリナへ投擲する。パウリナは弾かれたように階段へと転がって避ける。その頭部が寄り掛かっていた場所に、刃を潰したばかりの剣が半ば辺りまで突き刺さった。
 パウリナはそれを激しき瞳で睨んで叫ぶ。

「て、てめぇ!本性見せやがったな!」
「ふん。あん
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