第三章、その4の2:拳と杖
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!!』
『いやそれ唯の宝石投げ、ってあいたたたたっ!!光物は大切に扱えぇぇ!!』
「教会の宝物が根こそぎ投げられるっ!」
「個人的には大歓迎だなぁ」
「緊張感持とうぜぇ、パック」
哀れ、アダンに近寄った憲兵が顔にアメジストの嵐を受けて苦痛を漏らし、続けざまの飛び後ろ蹴りを腹に受けて吹っ飛ばされて、壁に後頭部を強く打ち付けて白目を剥いた。そしてそのまま横倒しで螺旋階段へと倒れ込み、段差に身体を跳ねさせながら転がり、階段半ば辺りまで行って漸く動きを止めた。見るも無残な最後である。
汗一つ掻かず所業を成し遂げていたアダンは、ふと入り口の方に目を遣った。兵達の幾人が入り口から出て行っている。意図は直ぐに理解できた。
「挟み撃ちって訳か・・・漸く頭回してきたかねぇ。そうでなくっちゃぁ喧嘩は詰まらない」
「け、喧嘩ってレベルを超えてるし、もうこれ唯の一方的な甚振りだよ!虎がゴキブリを食い殺すようなものですよ!」
「ん・・・なら別に悪くはないな?」
「あたし何言ってんのっ・・・相手に正当な理由を与えるなんてぇぇ・・・」
頭を更に抱える女性、同業者であるパウリナを他所にアダンは二階に置かれている調度品や武器に目を遣り、そして螺旋階段を登り始める憲兵達の姿を見る。数は全部で三人だ。
(階段は二箇所・・・中に一つ、外に一つ。ちょろいな)
アダンは壷に手を掛けて、不満顔でそれから離れる。如何にも重さが足りない。ドワーフ二人程度で支えられるほどの重みだ。息を一つ吐いたアダンはむんずとその場にしゃがみ込んで、キャビネットの底の方に手を掛けた。そして唸り声を漏らしながらそれを持ち上げる。
「ふんぐぉぉおおおっ・・・」
鍛え上げられた腕の筋肉が盛り上がり、首筋に血管が浮き上がった。パウリナはありえぬ光景を目撃して瞠目する。彼が持ち上げたのは大の大人四人で漸く持ち上げられるほどの重厚なキャビネットだ。中は空のままであるが、それでも重量が凄まじいものに相違ない。
その認識は兵達に共通する事である。螺旋階段を登り終えようとした者が恐怖の瞳で、どんどんと接近する足の生えたキャビネットを見詰めていた。
「ちょ、ちょちょちょちょちょっとぉっ!それは無いんじゃーーー」
「あらよっとぉおお!!」
爽快な声と共にキャビネットが投げつけられ、先頭の男がそれを抱える形で倒れていく。当然の如く後ろに続いていた二人の者もその巨体に押し潰されるように倒され、三者揃って手摺に寄り掛かる。急激に圧力を加えられた手摺は元々の老朽化も手伝って皹が一気に入り、そのままばっくりと破砕する。声にならぬ悲鳴を漏らしながら憲兵等は穴から落下し、キャビネットに押し潰される形で一階に激突する。げぇっという蛙の悲鳴と共に床に落下したキャビネットが、
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