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王道を走れば:幻想にて
第三章、その4の2:拳と杖
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か)

 若き日々と比べて重みと気だるさを感じやすくなった丸太の足を動かしつつ、熊美は厳しき表情で回廊を歩いていく。向かう先は、宮廷の厩舎である。




 教会の裏手にある宝物庫。貴族の館を改築しただけあって大きな広さを持つ建物は長き時を経て、今ではすっかりと物置小屋のような扱いを受けている。嘗ての一族の繁栄は露と消え、現世を謳歌する生臭い者達の財宝の受け皿となっていた。とある警備兵は思った。此処に昔日の賑やかさを取り戻せば、きっと草葉の陰に居るであろう貴族の霊も慰みを覚えるであろうと。
 その願いは図らずも今、全く別の方向性を持って叶えられていた。がしゃんっ、ばきんっと轟くそれは、まるで大きな割れ物が破砕する音に似通っている。穏便な色など微塵も感じられぬ館の内で、獣染みた雄叫びが轟いた。

『ヒィイイイハァァアアアッ!!』
『ああああっ!?!?こっち来るなぁぁっ!!!』
『馬鹿馬鹿馬鹿っ、それメッチャ高価なんだから投げるなって投げるなああああ!!!』

 悲鳴を上げた二人の警備兵の頭部に、豪華そうな壷が叩きつけられた。粉砕した壷の欠片と共に問答無用で昏倒する二人を二階のバルコニー部分にて、虎の刺青を体に施した蛮族風の男が快活に笑い飛ばす。フロアの隅では美麗な銀髪をした女性が怯え気味に縮こまっている。

「ハハハハハっ、ざまぁみろやっ!!おい嬢ちゃんっ!気分はどうだい?」
「なななな・・・何してやがるんですかぁぁっ、この脳無しぃぃ!!教会に完璧に喧嘩売るとか馬鹿じゃないのっ、本当にぃぃっ!」
「ふはははっ!今更何を躊躇う!!腐った蜜柑に火薬を投げつけるようなものだっ!!俺が火を点けるわけじゃないから大丈夫だぁぁ!!」
「予備罪の適用範囲内だよっ!脳筋野郎!!」

 女性の罵りを受けた男、盗賊アダンは低く笑いながら再び警備兵等に視線を合わせた。建物の一階部分、ダンスフロアのように広がるその部屋には壁側に向かってチェストやキャビネットや武器棚が置かれ、そして彼と相対する警備兵や憲兵、そして一般の兵士の姿等が見て取れた。数の暴力にて万事解決する彼らは而して此処では、圧倒的な膂力を誇る男一人に対して、全く為す術も無く打ち倒されているのが現状であった。
 一階フロアの所々では既に何人もの者達が倒されており、床に伏せたり壁に寄り掛かったりしている。かの者を倒さんと切り掛った瞬間、手当たり次第に部屋の宝物で以って潰されていく次第であった。現場に駆けつけた兵士、ミシェルは恐怖する。鍛錬を積んだ同胞達が唯一人の人間に蹂躙される事。そして教会の宝物が異常な速さで粉砕され、その価値を泥水と等しきものとしている事。

「なっ、なんとかしてあいつを止めなくちゃならんっ!さもないと・・・」
『ハッハッハァ!!ジュエリー弾を喰らいナァっ
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