第三章、その4の2:拳と杖
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に向かって杖を振り抜いた。そう、先程までチェスターがやっていたように。
「ファイヤアアッ!!」
振り抜いた杖の宝玉が煌き、轟々と燃える小さな火球を作り上げた。火球は真っ直ぐに聖鐘の上方へと向かい、その業熱が荒縄を一瞬にして黒い灰と変えさせる。
自然の摂理に従うままに支えを失った聖鐘が落下して、その下に敷かれていた落し戸を打ち抜きながら沈み込む。強烈な破砕音と木片、そしてその崩落に巻き込まれるように、聖鐘を回り込んで足の向きを変えた直後のチェスターが、為す術もなく身体を沈めていく。
「ぬおおおっ!?」
慧卓まで、後一歩の所まで近寄っていたのだ。それをこのような形で、しかも己が足蹴にした得物によって邪魔されるのは実に腹立たしい。
チェスターは落下しながら渾身の力で執念の腕を伸ばし、幸運にもその左手が、憎き敵の足首を掴み取った。
「あひぇっ!?」
当然の如く慧卓も落下に巻き込まれる。突然の出来事に杖が手から離れてしまい、二つの宝玉から光沢が消え失せた。ずるずると引き摺られる身体に抵抗しようと腕を伸ばすがどうしようもない。二枚の落し戸を打ち抜いた聖鐘の轟きを聞きながら、慧卓はどうにか落し戸の残骸に両手の指を掛けた。足首にチェスターの体重が、そして両手の指の腹に二人分の体重が掛かる。落下の抵抗で削れた爪の痛みもそうであるが、今度は糸で締められるような痛みが指全体に広がった。
慧卓は形相を完全に苦痛やら怒りやらで歪める。チェスターもまた同様に怒りを抱きながら叫ぶ。
「おのれぇぇっ、ちょこざいな手を使いおって!!私だけでは落ちんぞ!!」
「あああ馬鹿馬鹿馬鹿っ!!!なんで掴むの馬鹿野郎っ!トマトになるでしょぉぉ!!!」
「喧しい!!聖鐘を叩き落した奴がそれを言うなっ!落とした責任くらい自分でつけ給え!!」
「ワタシセキニンッテコトバワカリマセェェエン!」
「知らんわぁぁああ!!」
口喧嘩をする内にも指に段々と力が入らなくなっていく。一本、二本、三本と指が残骸から離れていく。落下へのカウントダウンを無意識に数えてしまってか、五本目が滑ると同時に残り全ての指も残骸から離れてしまった。
「っひっ・・・!」
「ちっ!!」
一瞬の悲鳴と舌打ちを伴って二人の身体は無様に落下し、聖鐘へ真っ逆さまに落っこちて行く。チェスターが身を捩って聖鐘の金肌に身体を打ち付て転がり、慧卓はその臀部を鐘を吊るす輪っかにぶつけた。
「ふごっ・・・!!」
鐘から滑り落ちて身体を地面に打ち付ける。身体の痛みよりも先に臀部の強烈な痛みに慧卓は苦しむ。、
「あっっっつぅうう・・・二回とも端っことかぁぁっ・・・」
「・・・これが、地図だと?」
「あ?」
慧卓は声に反応して涙目の面を上げ、奇妙
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