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王道を走れば:幻想にて
第三章、その4の2:拳と杖
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あるでな」
「レイモンドっ!!質問に答えなさい!!国王は本当に自分で決断したの!?それとも貴方達宦官に唆されてーーー」
「王女様っ!!」

 激するコーデリアの言葉をアリッサが制止する。はっとして見遣ってくるコーデリアを押さえてから、アリッサは跪いて深々と頭を垂れた。

「申し訳ありませぬ、レイモンド執政長官殿。此の非礼の罰を、王女様に代わりましてどうぞこの私めに!」
「・・・誰にだって独り言を言いたい時もあるからな」
「っ・・・御温情に感謝致します、執政長官殿」
「なんの事かな・・・ではこれにて・・・」

 レイモンドはそう言ってはらりと白髪を靡かせながら執務室から出て行く。扉がばたんと閉まる。
 残された三者も既にこの部屋には用が無くなった。重苦しく足を動かすコーデリアに従うように、残りの二者も続いて部屋を出て行く。研磨された綺麗な石畳を踏みしめながらコーデリアは不満を零す。

「・・・不愉快です」
「コーデリア様。国王陛下がお取り決めに成った事に異を唱える事は、あの御方に御忠言申し上げる宦官の方々に反駁するも同義です。ただでさえ良い目で見られていないのですから、無闇な行動を執ってはなりません」
「それが一番の不快なのですっ・・・」

 ずけずけと歩むコーデリアに、アリッサは諌めの言葉を何度も投げ掛け続ける。愚図を零す子供をあやす姉のような光景を、数歩離れた所を歩きながら熊美は見詰めていた。

(どうしたものかしらね・・・あそこまで強情だとは・・・)

 国家の中枢に異を持つ事を赦さないとは言わない。だがコーデリアは王女なのだ、しかも王位継承権を持つ王女である。それが公然と国王の意思に異を唱える事は噂話のレベルであっても不穏極まりない。彼女自身それを理解出来ない程賢明ではないという事は在り得ない。だが友人が関わると自制が如何にも利かない感情的な性分であるが故に、その賢明さを失っているように見えた。
 何れ騎士の身分を戴いた後には彼女の心を更に鍛えようと決心した所、熊美の下へ一人の騎士が走ってきた。その者は跪いて頭を垂れ、恭しく言う。

「クマミ様、御助力をお願い申し上げたく参りましたっ!!」
「なんの助力だ?」
「教会の宝物庫にてドワーフの暴漢が一名、暴行を働いているので御座います!警備兵や憲兵、手の空いた兵士達を派遣しておりますが、かの者の膂力に勝てる者が居らず、苦戦しているので御座います!」
「・・・相分かった。馬を引け!直ぐに向かうぞ!」
「は、はっ!!承知致しました!!」

 騎士は急ぎ立ち上がり、案内するように背を向けた。熊美は急ぎ足で彼の背を追う中、宮廷に、そして王国に漂うきな臭い情勢に危機感を覚える。

(あまり良い物とは言えなくなってきたわね・・・もう昔のようにはいかない、
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