反董卓の章
第25話 「……本当に、これでよかったのかの? 玄徳殿……」
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しても考えて政を行ってきた自負はある。
だが、そこまで明確な方針を考えてきたとは言いがたい。
治水をすること、商業を発展させること……そんなことを漠然と考えて、あとは文官に任せていたのだ。
「食べさせるだけじゃダメです。食べるために働くことを覚えさせること。富ませるだけじゃダメなんです。富を流通させて一箇所に留まらないようにすること。これが一番必要で、一番難しいことなんだって……」
「………………っ!」
劉備の言葉に、劉表は言葉を詰まらせた。
劉表に全てが理解できたわけではない。
だがその思想、その政略は並の人間の考えるものではない。
今の劉備は、この洛陽にいるどんな文官高官たちよりも、遥かに高度な政治的思想を持っているのだ。
(これは嬢ちゃんが自ら考えたことではあるまい)
劉表には劉備の後ろにいるであろう、盾二の姿が見えるようだった。
今この時、この大陸の誰よりも高い政治能力を持っているであろう盾二に、畏怖と尊敬の念が劉表の心中に同時に生まれる。
(……やはり、わしの目に狂いはなかった)
自分が盾二に惚れ込んでいることを、劉表自身は自覚している。
だからこそ、盾二をいっそ自身の後継者に出来ないかと本気で考えてもいた。
その考えに間違いがないことを、改めて思い知った瞬間だった。
「だから、その為には技術を発展させること。その技術を流布することで効率を高めて……景升様?」
「……む、あ、いや……その、なんでもない。じゃが、まあ……あまりおおっぴらに言うことではないのではないかな?」
「……そうですね。私も覚えたばかりで……実は、その方法はまだご主人様や朱里ちゃん任せなので」
てへっ、と舌を出して苦笑する劉備。
「しかし……嬢ちゃんもいろいろ考えておるのじゃな」
「あー! ひどいですよ、景升様! 私だっていっぱい勉強しているんですよ? そりゃご主人様や朱里ちゃんには全然敵いませんけど……」
「あ、いや……」
ぷーっと膨れる劉備に、なだめるように言葉を濁す劉表。
だがこの時……劉表が心に決めたことが、劉備にとって新たな試練になる事を。
誰も予測し得なかったのである。
―― 曹操 side 虎牢関出口 ――
時は遡る――
虎牢関での戦いからすでに二日。
兵の被害を纏め、統制を取り戻し、行軍が可能になるまで実にそれだけの時間を必要とした。
周辺の天変地異の爪痕もあり、洛陽方面への出口付近にも崖崩れが起きており、その復旧にも時間が取られたのも痛い。
ようやく今日にも行軍できる状況となった朝。
私は自陣天幕内で、斥候からの報告を受けていた。
「……どうやら、北や南
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