反董卓の章
第25話 「……本当に、これでよかったのかの? 玄徳殿……」
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思い出し、急に恥ずかしくなる。
自分が劉備の年齢の頃、民の事をこれほどまでに考えたことがあっただろうか……と。
「梁州に帰ったら、やらなきゃいけないことがいっぱいあるんです。もっと皆が住み良い土地にして、いろんな特産品を作って、それを大陸全土に広めていく。ご主人様に教えられたんです。民を救うのに必要なものを」
「盾二に……? 一体それは何なのじゃ?」
劉表が首を傾げる。
その姿に愛嬌を感じて、劉備はくすっと笑った。
「私が放浪していた時、民を救うためには大陸を統一しなきゃいけないと思っていました。でも、ご主人様と出会って、いろんな教えを受けて……方法はひとつじゃないとわかったんです」
「こ、これ、嬢ちゃん!?」
突然の劉備の発言に慌てる劉表。
洛陽の……しかも中枢である温徳殿の渡り廊下で、大陸を統べるなどと言ったのだ。
冗談にしても、下手なものに聞かれれば首が飛ぶぐらいじゃ済まされない。
「例え誰が大陸を治めようと、民を知らない人にその暮らしを劇的に変えることなんて出来ないんです。それが出来るのは、土地に根ざした民自身なのですから」
「……嬢ちゃん」
劉備は渡り廊下から庭へと出る。
天は晴れ渡り、雲ひとつない青空がまぶしかった。
「だから、その民が本当に欲しい物を作るんです。まずは食べ物。次に便利な道具。全てはそこから始まるんだって」
「……食べ物はわかるが、道具、じゃと?」
劉表は、劉備の後を追うように庭へと出る。
心なしか、声を潜めている。
「ご主人様が言っていました。『衣食足りて礼節を知る』、これが最も大事なんだって」
「……はて。似たような言葉を何処かで聞いたな」
「正確には『倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る』だって言っていました。これは朱里ちゃんが教えてくれましたけど」
「諸葛殿か……おお、思い出したわ。管子、管仲の著書の一節じゃな」
管仲……春秋時代、斉の宰相だった人物である。
この一節には、民生の安定があってこそ政治が行えるという意味が込められている。
その話に、深く頷く劉表。
「確かに……確かにそうじゃ。民の安定があってこそ、正しい政治が行われる。逆を言えば、腐敗する政治が横行するということは……おっと」
呟いた言葉に、不穏なものが混じったことに気付く劉表。
すぐさま口を閉じたのは年の功といえる。
「だから、政を正すだけでなく、民の意識からも変えていかなきゃ、こんな乱世は終わらない。その為にはまず飢えないこと、そして着る物に困らない程に富ませることが必要なんです」
「……飢えない事と、着る物に困らない事」
劉表にとっては、目から鱗が落ちた思いだった。
民を安んじることは、劉表自身と
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