第五十三話 思春期F
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ゃ…」
「かけるだろうね。でも、そういうものだよ。嫌かな?」
「私は、……嫌かも」
アリシアの答えに、男性は小さく噴き出す。素直だね、という気持ちを込めて。
「優しいね」
「優しくないよ。お母さんとお兄ちゃんに、ひどいこと言っちゃったもん」
「どんなことを?」
問いかけてきた声に、アリシアは迷いを示す。母と兄のことは、最初から口にするつもりがなかったのだ。それなのに、口に出してしまった。だけどこの人なら、一緒に考えてくれるかもしれない。そんな思いが彼女の中で生まれる。だけど、それは迷惑だ。
「私が子どもの頃は、それはもう周りに迷惑をかけてしまってね」
「?」
「いたずらっ子だったんだ。作るのが好きで、それで発明しては困らせていた。大人になった今でも、迷惑をかけてしまう人たちはたくさんいる。不甲斐ないばかりの大人だけど、だからこそ決めたことがあるんだ。……他人の迷惑を、たくさん受け止められる人間になろうって」
だから、おじさんの成長のために1つ迷惑をくれないかい? 楽しそうな、いたずらっ子のような子どもの笑み。それが、自分の知っている人とそっくりで。
―――アリシアの迷いは、綺麗に消えてしまっていた。
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