第五十三話 思春期F
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
とはなんとか隠す。体力がないのに走った所為で、めちゃくちゃ息切れを起こしていたのだが、気絶のおかげで気づかれなかった。6年前の幼児と今の姿に見分けがつくのか、と色々ツッコミどころはあったが、あわあわしていたアリシアは幸い気づかなかった。
嘘が下手なマイスターに、コーラルの内心は冷や冷やしぱなっしだったのは、仕方がないことだろう。身体があったら、きっと胃痛でももらっていたかもしれない。
「ご、ごめんなさい…」
「謝る必要はないさ。ただ……そうだね」
固くなったアリシアに、エルヴィオは小さく笑うと懐に手を入れる。カチッ、とスイッチが入った音が響き、それに少女たちは不思議そうな顔をした。すると何かが彼の服の隙間からごそごそと動き出し、次には驚きと感動が広がった。
「うわぁー!」
「かわいい!」
彼の懐から出てきたのは、ぬいぐるみのような愛らしい動物たちだった。犬に猫に馬に羊に兎、とたくさんの種類がおり、それが子どもの手のひらに収まるぐらい小さなサイズであった。動物たちは鳴き声をあげると、一斉に空へと飛びあがる。そして、アリシアとウィンクルムの周りを楽しそうにくるくると回った。
アリシアが恐る恐る触ってみると、ほのかに温かいことにさらに驚く。こんなに小さな動物は見たことがなく、しかも自由に空を飛ぶなんて、初めて見た。アリシアの手が気に入ったのか、嬉しそうに頬ずりをしてきてくれる。それがかわいらしくて、気持ちがよくて、彼女は笑顔を浮かべていた。
『これは、デバイスですか』
「えっ、そうなのっ!」
コーラルの言葉に、アリシアは思わず抱いていた動物たちを見つめる。この子たちが、コーラルや学校に置いてあるデバイスと同じ? アリシアにとって、デバイスとはまさに機械そのものだった。固くて、無機質な材質のもの。それがこんなにも柔らかく、温かいのかと。
「正解だ。といっても、外装に力を入れ過ぎて、デバイスとしての効力はほとんどない。古代ベルカ時代にあったユニゾンデバイスの研究データを取り込んで、多少の感情を作ってはみたんだが、それに処理が一杯になってしまい、知能はストレージ並みでな。飛行機能はついているが、魔法の補助具としての力はない」
「それって……」
エルヴィオの説明に、アリシアはギュッと動物たちを抱きしめる。デバイスは魔導師の手助けをするために存在する、魔法の補助具だ。だけどこの子たちは、開発者から使い物にならないと言われたも同然だった。アリシアの様子に、心配そうに動物たちが鳴いた。
「それでも、私は作ってよかったと思うよ」
「えっ?」
「何故ならその子たちは、とても難しいことを成し遂げたんだ。他のデバイスや私では、どうすることもできなかったかもしれないことをね。……泣いている女の子
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ