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少女1人>リリカルマジカル
第五十三話 思春期⑦
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ラルが本気で怒るのは、心配の裏返しなのを兄を見て知っているからだ。


「あの、初めまして……じゃなかったりしますか?」
「……そうだね。こんな風に直接会うのは、6年ぶりかな。プレシアたちが、クラナガンを引っ越してからは初めてになる」

 プレシア、と呼んだ声にアリシアは肩を揺らす。それに彼は困ったように笑いながら、追及することはなかった。心配性のコーラルが何も行動を起こさないということは、彼はかなり信頼されている。そう思って、初対面ではないのかもしれないと考えたが、見事に当たりだったようだ。

 しかし、さすがに6年前では記憶がないにも等しい。アリシアは昔、クラナガンに暮らしていたと聞いていたが、当時の記憶はまったく思い出せない。研究者のようだから、母の仕事関係の人だったのかもしれない。開発グループのみんなには、とてもかわいがってもらったのは覚えている。

 そのようにアリシアは思ったのだが、何か違う気がすると男性を見ていて感じる。彼の眼差しは、どこかむず痒いのだ。懐かしいような、不思議な感覚だった。

「私は、知っているかもしれないですけど、アリシアって言います。その、お、お兄さんのことは何と呼べばいいですか?」
「名前はエルヴィオだけど、おじさん、でいいさ。思うと、お兄さんと呼ばれる年でもない。……8歳の女の子が、もうすぐ40の男をお兄さん呼びするのはちょっとまずい」

 傍から見たら、幼女2人といる中年男性。しかも、幼女の1人には涙の跡があり、さらにもう1人の幼女は、油断すると汗をかいたからと服を脱ぎかけるのだ。人通りがないことに一番救われたのは、果たしてどちらだろうか。

『……エルヴィオ様、と今は呼んだ方がよろしいですか?』
「その、……頼む」

 気まずそうに顔を逸らす男性に、コーラルは呆れながらも従う。アリシアに「おじさん」と呼ばせたということは、父親と名乗る気がないということだ。普段は「マイスター」と呼んでいるが、コーラルがプレシアと離婚したその夫が作った機体であることを、アリシアは知っている。

 記憶にはないが、家族と繋がりがある男性に、アリシアは少し肩の力を抜いた。全然知らない相手なら、他人行儀に緊張しただろう。友人や知り合いの人なら、今の自分を見られたくなかっただろう。だが目の前にいるのは、幼い頃の自分を知っているだけという、魔法で怪我をしないように守ってくれた優しい人。

「おじさんは、どうしてここに?」
「あぁ、私はこの近くで働いていてね。休憩ついでに歩いていたら、知っている女の子が見えたんだ。泣いているようだったから、心配になってしまって」
「あっ」

 アリシアは泣いていた姿を見られたことに恥ずかしくなり、顔を赤くして俯く。休憩なのに、実は全力疾走で現場に向かっていたこ
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