第五十三話 思春期F
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っと、じ、じんこぉーこきゅーー!」
『ウィンクルム様。見た目3歳児がそれをやったら、社会的に止めを刺します』
受け身すら取れない男性に、コーラルは冷静だった。頭ばかりに栄養がいって、身体能力は置き去りになったような人物だが、耐久力は何故か高いことを知っていたからだ。妻からの調きょ……、愛、そう愛を耐え抜き、息子の空中突撃すら数分で復活する。
出会いがしらに突撃されるのは、もはや彼の宿命なのかもしれない。息子並みにシリアスをブレイクする父親に、血縁ってすごい、とコーラルはこっそり思う。アリシアは全く気付いていないが、6年ぶりに再会する親子の場面ではなかった。
「……その、すまないね。びっくりさせてしまったようだ」
「だ、大丈夫です。私がぶつかっちゃったのが、悪いですから」
アリシアは男性の謝罪に、慌てて頭を下げる。未だに戸惑いはあれど、彼女は真っ直ぐに相手の目を見た。おそらく目元は、真っ赤になっていることだろう。それでも衝撃の出会いのおかげか、どうやっても止まらなかった涙は、止まっていた。
「おじちゃん、お腹と頭大丈夫? 痛くない?」
「おじ……、うん、大丈夫だ。私は大丈夫だよ…」
ウィンクルムの言葉に、別の意味で胸が痛くなったようだが、彼は柔らかく笑って見せる。コーラルのおかげで、お縄にならずに済んだ男性は、近くのベンチにアリシアたちと一緒に座っていた。ウィンクルムに回復魔法をかけてもらい、早めに復活したのだ。
アリシアの傷ついた足を治療しながら、ウィンクルムは彼の笑顔に首を傾げる。どこかで見たことがあるような、誰かに似ているような。明るい金色の髪と赤い瞳は、どちらかと言えば姉とそっくりである。男性はアルヴィンたちと違い、癖っ毛のないストレートな髪を、後ろで一つ括りにしていた。
『髪、随分伸びましたね。以前は肩ぐらいまででしたのに』
「あははは、切る時間がなくてね」
『作らない、の間違いでしょう。大の大人が、女の子に突撃されて、気絶はまずいのではないですか』
「吐き出すことがなかっただけ、褒めてくれてもよくないか」
『吐き出すほどの食事を、取っていないからでしょう』
うぐっ、とデバイスにいじめられている男性に、アリシアとウィンクルムは驚きに目を見開く。コーラルの口調は丁寧ながら、明らかに棘がある。機械でありながら、喜怒哀楽を表現することができるが、本気で怒っている時は機械的に淡々と怒るのだ。あの兄でさえ、この時のコーラルには逆らえなかったりする。
コーラルとこの男性は知り合いらしい。ウィンクルムは先ほど話していた協力者の存在を思い出し、話をする2人の様子に大人しく成り行きを見守ることにした。アリシアは2人の掛け合いから、かなり親しい人物らしいと考えを巡らせる。コー
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