#5『ファーストリべリオン』:3
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そうか、分かった……すぐ行く」
シュートが習得している、刻印に頼らない下位魔術、《通信》だ。魔術回路を刻んだプレートを持っている者同士で通信を可能とする術で、一応レギオンメンバー全員がこのプレートを所有している。体内の魔力を流し込めば通信が可能となり、連絡を取り合うのに非常に便利なアイテムだ。緊急時のために、と全員にシュートが配布していたのだが、どうやら何か起こったらしい。
「《教会》支部の近くに、援軍が来たらしい。赤い衣の集団……まったく、手が早いな《教会》は」
「赤い衣の集団?」
「うん。たぶん第九師団だ。格闘戦のエキスパートで構成された、《教会》の上位守護組織《十字騎士団》の一角」
《十字騎士団》の名前は、メイも知っている。《教会》の神父でありながら、戦闘を担当する集団《十字騎士》によって構成された、《教会》守護組織の最上位界。聖職者の最高位である《十五使徒》と並んで、統治機関《七星司祭》を守る最強の戦士たちのはずだ。
それが、なぜここに――――と思い、直後に納得する。
《教会》の敷いた法制では、反逆罪は死罪。即時抹殺か、捕縛の後に処刑か。メイたちは堂々と街を破壊し、雑兵たちを殺している(その多くがリビーラもしくはククリの犯行で、メイとキングはほとんど何もしていないが)。どこからどう見ても危険極まりないテロ集団だ。恐らく『即時抹殺』の用法を取るべく、彼らを出動させたのだろう。
だが、それで怖気づいているわけにはいかない。やっぱり《教会》のメンバーであれども、人々を攻撃するのは忍びない。だが、メイの中にはすでに理想がある。犠牲は最小限が一番だが、それでも『なくならない』と、妥協できるほどには、『この世界』のメイは現実的にできていたようだった。
「第九師団か……ククリの近接戦闘力でも一人は危険だな……救援に向かうか。……メイ、ちょっとこっち来て」
「え?う、うん」
キングの近くに駆け寄ると、彼はおもむろにコートの下のベストと、その下のワイシャツの前ボタンを全開にした。
「ちょ、ちょっと!?」
「メイ、僕の心臓を見て」
「……心臓?」
思わず目を覆い隠していた手を外すと、キングの細身ながらも鍛えられた体が見える。少女の様に綺麗な肌なのに、きちんと筋肉はついている。男性の裸体を見た経験など皆無に等しいメイは、それだけでこわばってしまうが、その左胸を見た瞬間、さらにこわばった。
そこには、奇妙な模様が彫り込まれていた。十字をかたどった剣に、三匹の蛇が絡みついている模様。その内、左右の二匹には翼が方翼ずつ生え、真ん中の一体は両翼だ。魔力の輝きを纏って、淡く発光するそれは、間違いなく《刻印》である。
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