#5『ファーストリべリオン』:3
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い。僕の理想はかなわないけど、君の望みはかなうだろう。僕がいなければ、結局《レギオン》がいる意味もない。彼らだけで行える殺戮には限度が来るだろうね。ククリのあたりなら余裕で《箱舟》一つ沈めるかもしれないけど……だけど、君は二度とこの殺戮を目の前で見る必要がなくなるよ。
僕が《神》を殺さなければ、再び世界の終りは確実に訪れるだろう。今度こそ人類は滅びる。それでもいいのかい?――――とは聞かない。もしかしたら僕が知らない、誰かの《死》以外で世界を救う方法があるかもしれない……結局僕はそれは思いつかなかったけどね。
全て君の自由だ。僕は君の決めたことを尊重するよ」
そう言ってほほ笑むキングは、一瞬、全てを諦め、絶望した少年のように見えた。なぜ彼がそんな表情をしたのかは分からなかったけど――――それでも、キングの長い長い独白は、メイにひとつの覚悟を決めさせるには十分だった。
キングの心臓に充てられた右手と、地面についた左手を、ゆっくりと持ち上げて、キングの頬を掌で挟み込む。その眼を、しっかりと正面から見る。
強い理想と、どこか諦めた様な色と、子どもっぽい光と――――いろいろな感情が詰まったキングの瞳は、右が髪と同じ深紅で、左目が金属の様な灰色だった。その眼には、決意の色がひときわ強く輝いていた。
そっと彼に近づき――――その唇を、メイ自身の唇でふさぐ。キングの目が、驚愕で見開かれる。だが、数瞬の後、彼はゆっくりと、メイを抱き締めた。
ここが、戦場であるだなどと、誰もが忘れた瞬間だった。もっとも、この場にはキングとメイの二人しかいなかったのだが。
メイの主観では、大分長い間キスをしていたように思ったが、実のところ、ふれあいはほんの数秒の出来事であった。
「……結局、あなたのこと殺しても、変わらないんでしょう?何も」
「……まぁ、究極的にはそうだね。目の前でたくさん死んで、死ななかった人は全員生き残るか運命か、目の前では誰も死なないけど、結局は全員死ぬ運命の二択だ」
「だったら、みんなが助かる道を選んだ方がいいわ。……それに、私にも理想ができたから」
今のは、誓い。それに辿り着いてみせると――――自らを《魔王》と縛るこの少年を、救ってみせると言う、誓い。
ふっ、と、キングの顔に微笑が浮かぶ。ふふふっ、と、小さな笑い声を立てた彼は、
「そうか。じゃぁ、頑張らなくちゃね。……まずは、この最初の《反逆》を成功させようか。目指すのは《教会》支部だ。司祭をとっちめてしまおう」
「うん」
頷き合うキングとメイ。だが直後、キングの顔がこわばる。立ち上がって数歩離れると、片手を耳に当てるキング。ぶつぶつと、何事かを呟く。
「ああ、うん……うん……こっちから見える。うん……
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