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ノヴァの箱舟―The Ark of Nova―
#5『ファーストリべリオン』:3
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いる。そして――――《教会》に染まりきった世界から見れば、悪役なのは彼らではなく僕らだ。僕たちはこれからも《反逆》と称した、実質テロ行為を繰り返す。賛同者を集め、万全の態勢を整えて《王都》へと進軍し、《神》を討ち取る。その過程として、《教会》は滅びるだろう。《教会》に染まった世界の住民たちは、それで僕達を《解放者》と賛美するか?否、《反逆者》とののしるだろう。だから、《反逆(リべリオン)》なんだ。《対抗(レジスタント)》でも、《解放(リべレイト)》でもない。未来を見据えぬ、ただの反逆」

 だけれど、と、そのままキングは続ける。

「世の中の全ての人々が、僕らのことを《悪》とののしろうと、《魔王》たる僕は気にしない。僕には理想がある。リビーラには夢がある。ククリにも、シュートにも、まだ見ぬ仲間たちにも、夢が希望が理想がある。そしてそれを叶えるために、ひたすら《反逆》する。その身をすり減らして、罵られながらも、意地汚く理想に縋り付く。
 ――――嗤うといい。けれど、もとより、理想のために犠牲はつきもの、だ。それは誰もが覆したいと願う事であり、けれども決して変えること成しえない真実。《ラグ・ナレク》のとき、全ての人間が、《箱舟》に乗れたと思うかい?よしんば全員乗ったとしても、動物たちはどうなる?魚たちは?鳥たちは?家畜たちは?文化はどうなる?……そう、いつの世界でも……いつだって、『理想のために犠牲はつきもの』。それは変わらない」

 キングは、けど、と再び逆説の接続詞を使って、今度は閉じていた目をうっすらと開けた。メイの頬に手を添え、戦場のさなかで場違いなほど優しい微笑を浮かべ、言った。

(メイ)はいつだって、どこの世界でだって、それを変えようと努力してきた。『前回』の(メイ)はね、《教皇》以外の人々も救われることになって、《箱舟》システムが起動されて、それから『全ての民を助けることは出来ない』と知った時、泣いて泣いて、全員を救う手段を夜通し考えた。『前回』の僕も、彼女と一緒に考えて考えて――――結局、急増のZランク《箱舟》に人々を収容することで()()()()()()()何とかなったけど、動物たちを全て集めることはできなかった。それに結局、今ではZランク《箱舟》は壊滅してしまってあのありさまだ。『前回』のメイの願いは、結局はかなわなかった計算になるけれども、僕はメイの理想を気高く思う。『前回』の僕も、きっと彼女のそこに惹かれたんだろう……君は、彼女の生まれ変わりだ。きっと君も、彼女の様に高潔な魂と、思いやりのある人間になれるだろう」

 だから、と、キングは肯定の意を示す。メイの右手を握ると、それを自らの心臓の前に持って行くキング。

「……今ここで、僕を殺してしまってもい
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