5話
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、士郎を睨む。その様子に、愛衣は驚きを見せたが――やがて、同じように士郎を睨む
と口を開く。
「た、確かに可能性はあるかも知れません! でも、そんな人が居ることを赦せるんですかッ!?」
「赦しはしない。……が、そういった可能性は認め申を得ない」
静に――何も映さない能面のように凍えた顔をしながら――否定と肯定を口にする士郎。
その顔に、どう答えて良いのかわからない。わからないから口にする。
「貴方は、それで良いのですか?
そうやって、そんな外道を――そんな考え自体があることを――“仕方ない“と認めてしまうんですか!?」
高音は叫ぶ。その理想、“偉大な魔法使い(マギステル・マギ)“が心の共鳴を以て声を荒げながら。
震えは、怒りに、哀しみに。
眼の奥から滲み出る涙を自覚しながら、それでも綴じることを許さず、理想は瞳を透し強く男を睨み据える。
何か、ワカラナイ衝動を抑えるように、両の拳を握り固め、地に縫い付けるように両の脚に力を入れる。
そうでもしないと――高音の中の“何か“が身体を支配してしまいそうだった。
「…………」
対する士郎は無言。
尚も鋼のように揺るがない。ただ、静かに高音の視線を受け止める。
ただ、静かに時は流れる。
交える二つの視線は、互いの心で擦れ違う。
少女は理想を求め、謳う。
男は少女の謳を聴き、無言。
謳う少女を慕う、尚小さき少女は――男女を悲しげに見詰め続ける。
――月に群雲、花に風――
見上げた月は雲に陰り、野花は風に散り逝く。
掲げた理想は静寂に陰り、願いは現に散り逝く。
月を見上げるなら雲を消せ。
花を見詰めるなら風を消せ。
その有り得ざる望みの名は――――
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