5話
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そうな佇まいと、その目の鋭さ。身長の高さも相俟って、近寄り難い印象が強い。
強いのだが――
「おはようございます。衛宮センセー」
――のだが、生徒のウケは良い方で、笑顔の挨拶は陰りの一つも無い。
「ああ、おはよう。…… む? もしや、とは思うが――夜更かしはしてまいな?」
「あ、分かります?
……ってか、何でわかるんです?」
朝の挨拶を返された女生徒。続く指摘に不思議そうな目を向けて問う。
女生徒自身は、少し眠くはあったが別段振る舞いに平常との差異は無いと思っていた。それ故の疑問。
「ふむ。いやなに、持ち辛そうにしている左の鞄から、だ。左肩に掛けながら、紐が弛む程に右手で持ち上げている。その癖、左手は鞄を小脇に抱えているのに動かそうとしない。
疲労が左――特に肩に掛かっているのだろうよ。勉強か何かは知らんが、長時間同じ姿勢だった。……違うか?」
返された答に、一瞬目を驚きに見開くと、照れ隠しに笑いながら「正解です」と口にする女生徒。
肉体的な疲労が、休息に対し回復が追い付かず、それでいて自制が効く程に仕事に難が無いなら――それは睡眠前に行われたと推測される。
勿論、その限りではないし、人間の行動範囲の広さや個性――出したらキリの無い選択肢がある。今回は正解だったし、衛宮教員自身もあくまで推論を語っただけだ。数ある可能性から、広く占めるパターンの割合と、少ない誤差範囲の解答を述べただけ。当人でもないのに、「作者の心境を書け」と問う国語の試験解答と大差は無い。
その推論の根底は、彼の観察力もあるが――経験測や知識から来る。
「あまり無茶はするなよ? 辛ければ私でも良いし、他の教員でもかまわん。頼れば良い。」
頼れと言われ、嬉しそうに「はい!」と朗らかな返事をする女生徒。尚も心配気に朝食を抜いてないかと問われるが、それには否定。
それに満足気に頷くと、「しっかりな」と一声。
鼓舞された様に、しっかりした足取りと疲れを忘れたような大きな手振りを以て、校舎に駆ける生徒。
衛宮教員は目立つ。
容姿も申事ながら、細かい気配りが生徒に人気だからだ。
近寄り難い印象も、慣れ親しめば驚く程優しく頼り甲斐のある印象に替わる。
目下、彼の評価は以下の事から読み取れるだろう。
曰く、――
「理想的な兄」
「執事にしたい男性ナンバーワン」
――他にも幾つかあるが、大凡はこのようなモノであり、大多数は好意的なモノだ。若干、例外もあるが。
「ほら、君はリボンが曲がっているぞ。可愛らしく髪まで整えた
のだ、こんなところで損はしたくないだろう?
そちらの君。何故そこでリボンを崩す。――何? どうなっているかわからないから直して欲しい等と……
申し訳ないがね、女性の胸元に不
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