5話
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、ベッドから這い出す。乾いては来たが、未だにべとつく寝汗は早く洗い流したい。魔法使いとしての高音が、「学生」として紛れ込む儀式。「不可思議」を太陽の下に曝す訳にもいかない。答えの返らない「夢」の記憶なんて、それこそナンセンス。そんな形も無ければ、それを覗くことも叶わない「今」では、ソレを理由に「表」に自己を置けないようであれば――理想には程遠い。
「無私の心で他者の為に」。それを謳うなら、自己を律せずにどうする、と。
気持ちを入れ替えるかのように数回、起きがけ頭を左右に振る。ついでに火照った両の頬を軽く平手で、逆手で、と熱を冷ますように交互に挟んでみる。後は習慣かされた手順をトレース。先ずは、やはり纏わり付く汗と一緒に――こびりついた嫌な気分も洗い流そう。
恒例の朝の通学ラッシュ――
――のはずなのだが、今日は幾分か人通りが少ない。理由は解りきっている。女子中等部などが修学旅行で出払っている為だ。
だが、それでも全体数から見れば高が知れており、気持ち混雑が緩和されたのを気付くくらい。修学旅行も高々一学年のみ、中等部を例にとってもその全体数の三分の一。学園全体なら――さて、何分の一になるのやら。
ともあれ、それは通学風景よりもより歴然とした影響を与える事態がある。別に学業に影響がある訳でもないが――云うなれば「裏側の事情」と言ったところか。
事、裏側とは言え年端も行かぬ学生達自身に非はない。どちらかと言えば、学園の教員側に問題が生じる。
学生も人の子。勿論親が居て、それは教員では無い者が大多数。
つまるところ、その子達を預かる以上、保護も義務付けられているのは必定。各学級担任と、その随伴教員も修学旅行に同伴するのは当たり前である。
しかし、それすら「表」の事情ではあるが――問題となるのは、その随伴教員の一部が「裏」での事情に関与している事実。この場合の裏側とは魔法関係者であり、俗に「魔法先生」と呼ばれる者達のことだ。
そもそも、学舎の大半は学生で、教員は存在数自体が少ない。学園全体での魔法関係者の総数は数パーセントであっても、反比例して教員数での魔法関係者は割合が増える。
要は、「学園での魔法関係者の残留数減少」が問題の根幹であった。
その残留魔法関係者の一人である衛宮教員。彼は今日も聖ウルスラ女子の校門に立っていた。
女子校に居るだけで男性は目立つが、彼の場合それ以前の問題とも言える。
何より日本人に見えない。初見で日本人だと思う人は居ない。良くてクォーター。身長の高さは除外したとしても、肌と髪と瞳の色は日本人離れし過ぎる。そのどれもが後付けの乾いた着色感や、妙な艶もなく、初めからそうだったとしか言いようの無い色だった。
一つ見方を違えると、知らずに緊急ダイヤルに繋いでしまい
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