4話
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衛宮先生!」
それに気付いた愛衣が、にこやかに挨拶。ついつい和んでしまうが、それが愛衣という少女の持ち味であり、高音も士郎も好ましいと思う在り方だ。
「ああ、おはよう、佐倉」
ぶっきらぼうで、短い挨拶だが――その実、韻は丁寧で優しく、一文字一文字にそれが込められている。
先程まで挨拶出来ずにいた為に、その分過剰に見える。
『……わざと実体化出来ないようにしたのは失敗だったかしら?』
実体化するのに人目を憚るなら、人目があるところを進むだけ。
嫌がらせのような囁かな意趣は――結果を見れば失敗だったらしい。
自身でも持て余す感情に、普段の嫌味を消した純粋な笑みを作る我が従者を睨む。それに気付いたのか、こちらを見て驚きの表情をする。それでも治まりを知らない高音と、驚きを困惑に変えて僅かにうろたえる士郎。更にそれを見て、くりくりとした綺麗な瞳に疑問を浮かべ、コクっと首を斜めに傾げる愛衣――
長くは続かなかったが、混沌の“韻“三つ。噛み合わない和音は、聴こえずとも鳴り響いていた。
「……で、やはり衣服の上では“影“を纏えないのかね?」
廃屋に入り、シートを敷き、そこで「着替え」て来た高音達に開口一番の士郎の言葉だ。残念ながらと答えを返し、理由も伝える。
やはり自身の肌と違い、その「境界」がイメージ出来ず、上手く“影“を纏えない。そう、「着替え」とは、戦闘用の防護服を、魔法による「操影」で編むこと。
対物理・対魔力を向上させるこの魔法。本来実体の無い「影」を纏う為、その重みや布擦れの煩わしさは無い。更に「影」と云う不定の存在は、その普遍的なカテゴリー「架空」と云うヒトの身近に在りながら、決して手の届かない存在としての定義を持つ。
「架空」―― つまり想像こそがその根底にある。自身の想像がそのまま力を持つのだから、魔力ある限り、自身の「イメージ」を崩さぬ限り――その力に際限は無い。
あらゆる意味で特殊な魔的な要素だが、その長所がそのまま欠点とも言えた。
端的に言えば、全ての根源は自身の裡に在る。外的要因も無い、自身との戦い。それに対する“彼“の言葉はこう――曰く、「勝てる自身を創造しろ」と。
「ふむ。少なくとも下着の上からでも影を纏えると、万が一の時
でも安心出来るのだがね」
万が一とは、イメージの破綻による影の消失だった。目下、高音の優先事項はこれだ。
「気絶する度に『脱げ』ていては、私もおちおち目を開けて居ら
れなくてね」
イチイチ皮肉を口にしなくてもわかってはいる。いるが、正論故に反論も出来ない。高音とて、好き好んで肌を曝したいなどと思わない。
だが、この防御はかなり優秀で、基本故に最奥とも言える。基本故に、ここからの発展も非常に多い。「操影」による自立“影“人形の同時
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