4話
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命じられ、寒空の中放置される。
尤も、基本霊体故に睡眠も食事も必要無く、気温の変化も関係なければ風邪も引かない。
妥当ではあるし、当人は納得しているが――初めてそれを聞く者の涙を誘ったのも事実だった。……本当に泣いたのは高音の妹分たる愛衣だけだったが。
自室のドアを開け、霊体の従者が自身と同じ室外の廊下に出た事を確認すると、ドアノブに鍵を挿し回す。
確かな設錠音とその感触、そして自身の手でノブを回し引いてみる。完全な設錠を確認した時、廊下を走る足音が聞こえてきた。
「おはようございます! お姉様!」
その声に振り返ると、案の定愛衣の姿があった。同じく「おはよう」と挨拶を交わし、揃って寮出入口へ向かって歩みを進める。
可愛いらしい花のような笑みと、その身を包むこれまた愛らしさを見せるチェックのワンピース。胸元の細いリボンと、肩のストールも似合っている。
そんな愛衣とは打って変わり、背後に感じる「空気」は重い。正に「空気」な士郎に、リンクを通した念話で問う。
『何を微妙に重い雰囲気でいるのです?』
その問い掛けに、ああ、と幾らか逡巡を見せ、やがて搾り出しように答えを返す。
『いや、なに――佐倉に朝の挨拶の一つも出来ない自身が不甲斐
無くてね……』
ああ、と今度は高音が心の中で頷きを入れ、納得する。
彼は魔法に対する才能が極めて低く、念話すら満足に行かない。高音と士郎にだけ赦された特殊な念話により、霊体でも会話は可能だが、受け身たる受信以外に彼が霊体での念話送信が可能かと問われれば――残念ながら黙って首を横に振るのが人情だと言えるだろう。
ついでに言えば、士郎は何かとこの後輩を気にかけているような節がある。
高音個人としても、この愛らしい後輩を気にかけて貰えるのは有り難い。有り難いのだが――不思議と、「何故か」不思議と――業腹な時もある。
『………………では実体化して挨拶でもしたらいかがです?』
なので少々気晴らしに弄ってみよう。
大概にこういう時は、彼の皮肉は出て来ない。答えに窮し、むぅ、と唸るだけ。これで溜飲も降ると謂うものだ。
「? どうしました、お姉様?」
いけない、何かに気が付かれたかのような愛衣に、「なんでもない」と答え隠すように歩み続ける。
その背後に、未だに重い「空気」を引き連れながら。
いざ寮外へ。
目的地は、廃屋のある学園都市の端の森林地帯。
一般人があまり踏み入らない場所で、結界の敷き易さと土地の広さが目的に適している。その目的は魔法の実技演習に外ならない。
秘匿を前提にする以上、行使する力を隠す結界を敷くのも修練の一環である。
愛衣と共に馴れた動作で式を編んでいると、いつの間にか実体化した士郎がいた。
「あ! おはようございます、
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