暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女マギステルたかね!
4話
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 4月の朝日は和らぐ……とはイメージだけなのか、カーテン越しの光りに寝呆気ながら右腕で壁を作る少女がいる。
 日が昇るにつれ上がる気温と、身体を覆っていた布団の中の暖かさが相乗効果を齎したのだろう。就寝中の無意識さで跳ね退けたのか、布団が幾分乱れ寝具としての役目を熟せずにいた。
 シンプルな桜色の寝間着も、その無防備さ故に――乱れに乱れている。具体的に云うなら、腹部が胸元まで捲れて臍が見えるくらいには。
 日の光りから逃げるように寝返りを一度。背中と膝と、ついでに手の甲も丸め、赤子のように縮こまる。
 無意識の動きを夜半から繰り返したのか、腰から太股にかけて寝間着が捻れている。……更に言えば、そのせいで若干白い布地が見えていた。
 あどけない寝顔は朝日から逃げれた今、幸福を体言したように眉尻も下がり、可愛いらしく半開きになっている口は穏やかな呼吸を繰り返す。呼吸に合わせ、輪を描いた唇からスースーと寝息が聞こえる。
 金色の髪も寝具同様乱れていたが、その輝きは変わらずにそこに在る。括れた腰から耳元までと一緒に、その長い髪も一部を除き朝日に照らされていた。
 光りを帯びた髪は、それ自体が貴金属のように輝き、絹のような滑らかさと軟らかさをアピールしている。その髪に触れたいと云う衝動に駆られる人も居そうだが ――少なくともこの場には少女しか居ない。
 そうして明かな惰眠を貪ること数分。静かな寝床に、外界から異音が雑じる。
 カチャカチャと。時にトントンと。
 次第にジューっと云う音に変わる。それと同時に鼻腔を擽る匂いに少女が反応を示す。
 音と匂いに抵抗するように、穏やかだった表情が険しさを帯びて行く。
 激しい抵抗を思わせる表情を数秒。やがて諦めに似た決意と共に、ゆっくりした動作で起き上がる。
 上半身を起こし、欠伸を一つ。ついでに右手で瞼を擦りながら、左手と全身を使い大きな伸びを一つ。
「ぁ、ふぅ……ん」
 激しい脱力感を感じさせる動きと、締まりの無い口許から出た意味の無い声を漏らし、傾いた身体のまま硬直。そのまま寝てしまったように動かない少女の口から呼吸音がする。
 一つ。二つ。
 三つを数えた辺りで再び瞼を擦り始め、四つ五つと続ければ。六つ七つで漸くモソモソと動き始める。
 ベッドに寝ていたのだが、緩慢な動きで落下せずに危なげ無く床に足を付ける。
 右、左と順番に足を降ろし、直立するとまた欠伸を一つ。とても覚醒していると言い難い動きで寝間着に手を掛ける。
 年頃の女性が無警戒過ぎた。何せ彼女の寝室は寮の一室であり、仕切にカーテンを使っただけ。それでもここは「女子」の為の寮だった。通常なら何の問題も無い。
 上、下と別れた寝間着を脱衣。下着姿姿になりながら、一画にある衣服棚に歩み寄る。この時までに気付くべきだったのだ、
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ