2話
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たのは遅すぎた。
――高音、紅茶で良かったか?――
彼と食事を共にしていた頃のこと。
私が彼の煎れた紅茶を初めて飲んでから、ひそかな楽しみにしていた。
それからは、その問いに、決まって嬉しさを表情に出して「はい」と答えていたから。
……きっと、さっきもそんな感じだったのだろう。だって、
――彼の表情も、昔を思い起こさせるから――
家政科の教員は、6名居る。
内、男性1名。他は女性だ。
実は、ここだけの話し、男性教諭の「衛宮士郎」に興味津々な女性教諭はかなり多い。
まあ、興味があるのと、付き合うのは話しが別だし、今はそれは関係ない。
女性だらけの職場で、最初はもしかしたら肩身狭しとオロオロするのでは? と、当初は思われていたのだ。
だが、いざ蓋を開けてみれば。彼は特に気負った様子もない。
女性の扱いに馴れたプレイボーイでもなく、既婚者か? と云うとそうでもない。
そのわりに馴れていた。
寧ろ、「肝が据わった」というか、サラっと聞いた話しでは、
「周りに女性が居ることが多かった」
……とのこと。
ものすごく気になる発言ではあるが、表情がそれ以上に気になるくらい疲れていた為、深くは聞いていない。
家政科教員としての実力は、何故か無駄に高い。執事か何かと間違いそうなくらいには。
紅茶を煎れる腕前も素晴らしく、家政科教員室にはいつの間にか全員分の立派なティーセットがある。
彼が用意したモノではなく、個人のモノ。一人が自分用のモノを用意して、「紅茶を煎れてほしい」と頼むのを見てから ――それからは割愛しよう。ある意味醜い。自尊心のぶつけ合いはあの時と、恋人が浮気した時だけで良い。
そんな彼が、一人の女生徒を教員室に連れて来た。
後で聞いた話しだが、事情があり昼食どころか朝食も食べれなかったらしい。
本来なら「自業自得」と云うべきなのだが、彼が私情だけでこういったことをするとは思えないし、校則にも「生徒に自らが作ったモノを分け与えてはいけない」なんて無いのだから良いだろう。
調理実習で失敗した生徒の為に、余った食材を出したりするし、調理実習で作成したモノを他の生徒に渡したりもする。
うん。問題ない。
それに――それにだ。
余程お腹が空いていたのか、待ちきれなそうな、嬉しそうな表情をした女生徒はかわいらしい。
紅茶で良いか? なんて問われた時の返事を聞いたら、正直ちょっと妬けたりもする。
するが――
――すごく良い表情だったし、その後の恥ずかしそうな顔は、そんな嫉妬心も帳消しにしてくれる。
私達――家政科女性教諭――にも紅茶を煎れてくれるらしいし、このくらいで目くじら立てたらポイントも下がろうものだ。
……何のポイントかは黙秘し
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